土台にあった「自分を信じる力」。

　その土台にあったのは、「自分を信じる力」だった。

「自分のことは自分でしか信じられない、信じられないと勝てない。自分がいちばん強いと思ってやらないと、張り合っているライバルたちに勝てないと思うんです」

　信念が実を結んだのが、パリでのリネール戦だった。

　ただ、まだ東京五輪への道はたやすくはない。原沢の残してきた実績を覆すのは容易ではない。緩まず、結果を出していくほかにない。

　それでも、信念は崩れない。

「自分の意思が大切だと思います」

　以前、そう語っていた影浦は、パリでリネールを破った大会のあとにこうコメントしている。

「リネールを倒せるのは自分だけ。最後まで（東京五輪代表を）狙っていきたいです」

　重量級ながら、179cmとこの階級では決して高くない身長もあって、背負い投げなど軽量級が得意とする技を武器として磨いてきた。

　自身の個性を把握した上で、自分ならではのスタイルを構築し、己を信じて歩む。

　その先にどのような結末が待っているのか。

　少なくとも影浦は、可能性を疑うことなく、歩んでいこうとしている。