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「君は関西人か、東京に負けるなよ」
野村克也からもらった珠玉の言葉。
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph byKyodo News
posted2020/02/12 20:30
楽天時代、報道陣に囲まれる野村監督。飛び出す言葉の数々はどれも思慮深いものばかりだった。
田中将大を一軍に残したノムさん。
いまから13年前のことを話して下さったことがありました。
野村監督が悩みに悩んでいたのは、ルーキー時代の田中将大投手を春先に二軍に降格させるかどうか。日本球界の歴史の中でトップクラスの選手育成、選手起用を行ってきた名将が例に挙げるほど悩んだケースだったと、教えて下さいました。
当時、球界としても世論としても、球界の宝をまずは下でじっくり育てるという流れがあった。ただ、野村監督は世間に何と言われようが「田中は一握りの一流」と確信して一軍で投げさせ続けることを選択した。「自分が嫌われようが選手が育つこと」を一番に考えていた証でもありました。そして見事に田中投手は、高卒ルーキーとして松坂大輔投手や江夏豊さんと肩を並べるような結果を残したのです。
2007年のあの判断がなかったら……高校生投手をどう育てるかという流れも変わっていたかもしれません。
「君は関西人か、東京に負けるなよ」
僕のように、野村さんにふと掛けられた言葉が、今を生きるかけがえのない支えになっている方や選手が必ずいると思う。
2020年2月11日。時が経てば経つほど「野村克也」の言葉はより多く後世に伝えられ、その意味もより深く考えられることになるでしょう。
強き者に対して誰よりも勝つことに飢え、指導することに醍醐味を感じ、野球を愛されている方でした。