Jをめぐる冒険BACK NUMBER
若き才能が伸びる霜田メソッドとは。
レノファ山口のキャンプ潜入・後編。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byNorio Rokukawa
posted2020/02/13 20:05
霜田正浩監督の熱い指導はピッチ内でも続く。「個人昇格は大歓迎」と語るが、もちろんチームとしてもJ1昇格を目指す。
山口が防戦一方だったわけではない。
とはいえ、山口が防戦一方だったわけではない。それどころか名古屋を慌てさせる場面が何度もあった。
小松の渾身ヘッドがGKの正面を突いていなければ、高井がGKとの1対1の場面で冷静にコースを狙えていれば……結果は違ったものになったかもしれない。
山口がいかに善戦したかは、名古屋のDF丸山祐市の言葉が物語っている。
「けっこう持たれて、押し込まれる時間帯が長かったから、苦しかったですね」
夜に映像を見てフィードバック。
その夜のミーティングでは、さっそく名古屋戦のフィードバックが行なわれた。霜田監督の右腕である分析担当の武石康平が試合後すぐに編集した映像が流された。
「はい、ここ、ストップ。このとき、晃太、シュートを打つのはOK。蓮とのワンツーでもOK。でも、逆サイドも意識しておいて。必ずここにうちのサイドアタッカーがいるから。見ないで出してもいい。相手のディフェンスラインの裏にうちのサイドアタッカーが入ってきていることをみんなで意識しよう」
霜田監督は「(安在)和樹、分かるよね?」「いいよね、(佐藤)健太郎」と語りかけながら話を進める。
最後は良かったシーンをまとめた映像が流され、45分にわたったミーティングは、こんな言葉で締めくくられた。
「決定機の数はうちのほうが多かった。相手陣内でボールを回す時間もうちのほうが長かった。でも、ミスや個人の力でやられてしまった。相手がJ1だろうが、代表選手だろうが関係ない。俺らがまずバチンとやってプレッシャーを掛ける。相手を食いにいく。先に殴る。
だから、開始1分で失点していたらダメなんだ。最初の15分は本当に集中する。それを肝に銘じて次の試合に臨もう。悔しいよね、この内容で1-3というのは。これをいずれ逆のスコアにできるようにやり続けよう」
このあと、練習試合は2月1日、4日、7日と中2日で予定されていた。その狙いを霜田監督が説明する。
「今年、オリンピックでリーグが中断するから、J2も水曜日に試合があるし、GWには中2日で組まれている。そのシミュレーションにもなるように練習試合を組んだんだ」
J1昇格から逆算し、細部まで手のこんだチーム作りはこうしたところにも窺えた。