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「火中の栗」と言われても……。
卓球界の偉人がテコンドー協会会長へ。 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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posted2020/02/02 09:00

「火中の栗」と言われても……。卓球界の偉人がテコンドー協会会長へ。<Number Web> photograph by Koji Fuse

木村興治氏は元トップアスリートの面影残す情熱家。ちなみに、協会副会長にはBリーグにてクラブの会長職を務める島田慎二氏が就任した。

テコンドーの世界は大きく進化していた。

 そのアテネでの岡本の試合を、木村は偶然にも現地で観戦している。

「率直に言ってわかりづらいスポーツだと思いました。あの頃はまだテコンドーの防具にセンサーがない時代だったので、『あれ、いまの攻撃で得点になるの?』と首を傾げた場面もありましたね」

 それから16年、テコンドーは大きく進化した。

 中でも2012年のロンドン・オリンピックから導入されたセンサー内蔵の電子防具であるへッドギアと胴プロテクターは、テコンドーの闘い方そのものを変えたといわれている。

 目にも止まらぬほどスピーディーな蹴りを、センサーの力によって的確に判定できるようになったからだ。

「テコンドーの俊敏な動きは卓球のそれと同じ」

 会長就任後、初めて観戦した今年1月の全日本社会人選手権で木村は「テコンドーの俊敏な動きは卓球のそれと同じ」と感じた。

「一言でいうと、パッと手や足を出す瞬間力。普通プロフェッショナルになると、頭から指令が手足に行くのではない。目から入った刺激がそのまま手足に伝わる。そうしないと間に合わない。卓球同様、テコンドーも零点何秒の世界だと思いました」

 やらなければならないことは山積み。

 まずは現在空席の強化スタッフを決めなければならない。東京オリンピックを目前に控え、ナショナルコーチのポストは空席のままなのだ。

「ナショナルコーチの勤務はフルタイムで長期間に及ぶ。母体(協会)との調整は極めて重要になってくる。今までは選手の大半が強化合宿に不参加というような時もあったと聞いています。コーチに不信感があったら、大切な選手を送り出す側も、かなりの勇気が必要だったと思います。なのでナショナルコーチの選出には、腰を据えた活動をしてくれるかどうかなどの確認が必要になってくる」

 旧体制では、代表が国際大会や強化合宿に参加する際、多額の自己負担金を用意しなければならないという財政面の問題もあった。その建て直しも大きな課題のひとつだ。

【次ページ】 日本卓球協会の借金返済で辣腕振るう。

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