競馬PRESSBACK NUMBER

大久保洋吉厩舎の厚い友情は今も。
吉田豊と高橋師が狙うクラシック。 

text by

平松さとし

平松さとしSatoshi Hiramatsu

PROFILE

photograph bySatoshi Hiramatsu

posted2020/01/24 19:00

大久保洋吉厩舎の厚い友情は今も。吉田豊と高橋師が狙うクラシック。<Number Web> photograph by Satoshi Hiramatsu

クリスタルブラックは北海道新冠町の大狩部牧場の生産。同牧場からは初の重賞ウイナーとなった。

2017年の落馬事故で長期休養。

 しかし、その尾形調教師も'18年には定年により厩舎を解散する事が決まっていた。再び苦しい立場になるかと予測出来た吉田豊騎手に手を差し延べたのが兄弟弟子である高橋文調教師だった。吉田豊騎手は述懐する。

「尾形先生もいなくなってしまうというタイミングで高橋先生に声をかけていただきました。『これからは自分が出来る限りのサポートはする』と言っていただきました」

 そんな中で重賞での騎乗依頼を受けた。また、メジロドーベルの仔ピンシェルの話を聞いたとも続ける。

「ドーベルの仔のピンシェルというのが良い馬だから『デビューから乗って欲しい』と言っていただきました」

 しかし、それらの話は一件の忌まわしい事故により実現しなくなる。それが起きたのは'17年12月9日の事だった。翌日のカペラS(GIII)で高橋文厩舎のニットウスバルに騎乗を予定していた吉田豊騎手だが、重賞で落馬して頸椎骨折の大怪我。翌日の新馬戦どころか、1年以上の休養を余儀なくされる事になってしまうのであった。

騎乗馬を用意してくれた高橋師。

「当然、ピンシェルのデビュー戦も乗れなくなってしまいました」

 結局、吉田豊騎手が競馬場に戻って来たのは約1年3カ月後の'19年3月。その復帰戦で騎乗馬を用意してくれたのが誰あろう高橋文調教師だった。

 その後、ピンシェルにも騎乗した。他にも高橋文調教師は可能な限り吉田豊騎手に管理馬の背中を任せた。

 しかし、先頭でゴールを駆け抜けるのは至難の業だった。その間、高橋文調教師は「豊を勝たせてあげる事が出来ず申し訳ない」と言い、吉田豊騎手は「高橋先生は沢山、馬を用意してくださっているのになかなか勝てないで申し訳ない」と感じていた。

【次ページ】 開業後初となる重賞優勝。

BACK 1 2 3 4 NEXT
吉田豊
クリスタルブラック
大久保洋吉
高橋文

競馬の前後の記事

ページトップ