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ピレスが語る、フランス代表の未来。
規格外のムバッペとジダン、アンリ。 

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栗田シメイ

栗田シメイShimei Kurita

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photograph byAFLO

posted2020/01/27 11:15

ピレスが語る、フランス代表の未来。規格外のムバッペとジダン、アンリ。<Number Web> photograph by AFLO

フランス代表の最初の黄金時代を知るピレスにとって、ジダンら同僚はどんな存在だったのか。

デシャンが監督として優れている理由。

――代表監督のデシャンはあなたもよく知る人物でもありますね。監督としての彼の特徴は?

「デシャンは生まれながらのキャプテンシーを持つ人物だよ。現役時代から彼は多くのものを勝ちとってきたんだ。そんな経験を持つ彼が指揮を執ることで、チームに規律が生まれた。それまでのフランス代表は、チームが1つにまとまることが難しかった時期もある。

 しかし、彼は明確なプランを持ち、それをチームに浸透させることに長けている。チームの和を乱すリスクがある選手は招集しないんだ。例えばカリム・ベンゼマだ。彼が優れたストライカーであることは誰の目にも疑いがないだろ。だが、デシャンは自分のチームに必要な選手を把握しており、そこがブレないんだ。そういった彼の意志の強さがフランスを頂点に導いた。フランスには間違いなく素晴らしい時代が訪れているし、有望な若手が多いことからもしばらくこの勢いは続いていくだろう」

――あなたがいた'90年代後半から'00年代前半の代表と現代表には、いずれもW杯で優勝したという共通点があります。

「あの時代を知る選手たちが指導者になり、フランスサッカー界に貢献しているのは素晴らしいことだ。当時のチームと今のチームの最大の違いは、ジズー(ジネディーヌ・ジダン)がいるかいないかだね。

 私たちがW杯で初優勝した時、ジズーの存在はあまりに大きかった。更に(リリアン・)テュラム、デシャン、ティエリ(・アンリ)と、各ポジションにリーダーとなれる素質を持つ選手がいた。今の代表には、ジズーほどの特別なスーパースターはいないが、当時と同じように選手個々の質が高い。デシャンがエメ・ジャケのようになるのも時間の問題だよ」

ジズーのような選手は他に知らない。

――ジダンは当時のチームの中でもそれほど特別な存在だったのですね。

「彼は別の次元にいたよ。どんなに難しいボールが来ても、彼は収めることができ、必ずチャンスに繋げた。チームにもジズーにボールを預けておけば何とかなる、という認識はあった。私もジズーがどこにいるのかということは常に考えていたね。ピッチの外でも彼はリーダーだったよ。彼以降も素晴らしい選手は出てきたが、ジズーのような存在感と技術を持った選手を私は他に知らない」

――彼が優れていたのは、具体的にはどんなところだったのでしょうか。

「それは彼が絶対にボールをロストしないことだ。うまく説明できないんだが、彼は自分の体の周りに“テリトリー”のようなものを持っていた。どのように体を使い、どこにボールを置けば相手に奪われないか。そういった相手と自分の距離感を熟知していた。DFは彼のそんな雰囲気を恐れて近づけなかったし、仮に自分のテリトリーに入られても彼はボールをキープし続けることができた」

――あなたから見て他にスペシャルな選手を挙げるとすれば、誰でしょう。

「それはやはりティエリだね。良い状態で彼にボールを渡せば、シュートまでいってくれる。代表では、ジズーのポジショニングとティエリの足元ばかり意識してプレーしていたよ。彼らにパスすれば何とかしてくれたからね(笑)」

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