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ネット破壊より凄い大坂なおみの力。
ブレーク危機を凌ぐ集中力と風格。
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byHiromasa Mano
posted2020/01/21 19:00
第2セットでは1度ブレークされたものの直後にブレークバック。ブレない精神力も大坂なおみは身に付けつつある。
ブレークを許した場面では……。
サービスゲームをキープした大坂が主導権を握ったかに見えたが、2-3からのサービスでブレークを許してしまう。このゲームは大坂のアンフォーストエラーが4本。ひとり相撲の形でゲームを落とした。
「手間取りたくないという気持ちがあった。3セットで勝つより2セットで勝てればそのほうがいいから」
大坂の偽らざる気持ちだろう。筆者の目には、このセットの立ち上がりから、大坂が早めに引導を渡そうとしているように映った。それが功を奏する場面もあり、墓穴を掘る場面もあり、という展開だったが、結局、ここでミスが集中した。
勝ちを意識した、焦った、という言葉では強すぎる。試合の中で調子を上げ、楽々逃げ切るイメージを描き、その思惑が外れたのだ。
先行した相手が逆に萎縮した。
筆者が「焦り」という言葉を選ばないのは、次のゲームですぐにブレークバックに成功したからだ。「自分のやるべきことに集中しなければいけないと感じた」と大坂。すると、先行したブズコバが逆に萎縮し、このゲームでダブルフォールトが2本。相手の方からゲームを差し出してくれた。
全豪初出場、四大大会での実績に乏しい21歳が、前年女王の前に尻込みしてしまったと見ることもできる。これもまた、現在の大坂の強さである。
ことなきをえて、大坂が6-4で逃げ切った。イメージから少し離れたが、全体的にはプラン通りの試合運びだったのではないか。
どの大会でも、試合環境に慣れない初戦は簡単ではない。もちろん、前年優勝者ならではの難しさもある。開幕前の記者会見で大坂はこう話している。
「もし1回戦で負ければ、(世界ランク)トップ10から落ちてしまうかもしれない。そんな重いものが昨年の全米でもあったし、今もまだ心の中にある。でも、それを追いやり、自分を信じるしかない」
難しい大会になると自覚、心構えをして臨んでいる。完璧とは言えないまでも、ディフェンディングチャンピオンの好発進と言っていいだろう。