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ネット破壊より凄い大坂なおみの力。
ブレーク危機を凌ぐ集中力と風格。
posted2020/01/21 19:00
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
Hiromasa Mano
選手の強さは試合の様々な場面から見てとれる。前年女王としてマリエ・ブズコバ(チェコ)の挑戦を受けた全豪オープン1回戦では、大坂なおみが放った弾丸サーブでネットのセンターストラップの取り付け部分が壊れ、修理のために試合が数分間中断、「ネットを壊した」と話題になった。
第2セット0-1で迎えたサービスゲームでの出来事だった。大坂が15-40からデュースに追い上げた。「ネット破壊」は次のポイントで起きた。
サーブがストラップを直撃。取り付け部分のひもが切れたか外れたか、という程度の損傷だったが、確かに「破壊」だ。さすが女子ツアーきってのビッグサーバー、と観客席がざわついた。
4連続フリーポイントでピンチ脱出。
珍事ではあった。しかし、本来はこのゲームの大坂が、サーブ4本、4連続フリーポイントでブレークのピンチを脱したことに感嘆すべきだ。
立ち上がりの大坂には硬さが見られ、丹念にボールを拾うブズコバのストロークを仕留めるのに難儀した。怖さはないが、粘り強く、ボールをとらえる感覚にすぐれたブズコバだけに、第2セットで0-2と先行を許すのは避けたかった。
15-40、ブレークのピンチを迎えた大坂はギアを上げた。この試合での最速となった時速189キロのサーブなど、エースを2本続けてデュースに追いついた。「ネット破壊」で打ち直しとなったファーストサーブは相手のリターンミスを強いた。
アドバンテージを握ってのサーブは、またもエース。この試合で7本決めたエースのうち3本を、この1ゲームに集中させたことになる。まさにトッププレーヤーらしい強さだった。