競馬PRESSBACK NUMBER
突然の騎乗で金杯制覇のデムーロ。
「コウセイが心配です」の気遣い。
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2020/01/10 07:00
中山金杯を勝利したトリオンフ。屈腱炎からの叩き2戦目の重賞勝利で、飛躍の1年となるか。
重賞勝ちは昨年のオークス以来。
先行策から早目に先頭に立ち、ウインイクシードやテリトーリアルらの追撃をギリギリ振り切って優勝してみせた。2着ウインイクシードとの差は僅かにアタマ。トリオンフの特徴を以前から把握しているような手綱捌きでの粘り込みによる勝利だった。
こうして今年最初の重賞を制したデムーロ騎手だが、実は重賞勝ちは久しぶりで、昨年、ラヴズオンリーユーで制したオークス以来。 そもそも重賞どころか、勝ち星自体、昨秋は伸び悩んでしまった。
9月は1カ月で13勝を挙げたが、その後、10月以降は12月の年末までの3カ月で9月1カ月と大差のない16勝。苦しい時期を過ごしていた。そんな状況を打破しようと、この年頭からは拠点を栗東から美浦に移した。その矢先、このような形で重賞を勝てるチャンスが舞い込み、それを見事に生かしてみせたのだ。
「アリガトウ。でもコウセイが心配」
当日の競馬場の昼くらいだろうか。私はたまたまデムーロ騎手と話す時間があった。
その時、彼は「今は少し苦しい時期だけど、我慢するしかありません」と語っていた。確かにその通りだと思った。彼の腕が確かな事は誰もが知っている事実。慌てふためく必要はない。我慢していつも通りにやっていればいずれまた風向きが変わるだろうと伝えたばかりだった。
中山金杯が終わった直後、祝福の言葉をかけると、彼は言った。
「アリガトウゴザイマス。でも、コウセイが心配です」
本来、騎乗を予定していた三浦皇成騎手を気遣う言葉が第一声として発せられた。これもまた皆の気持ちを代弁してくれたひと言だと思えた。
三浦騎手は早ければ3月には復帰出来そうとの事だ。元気に戻って来る事を願っているし、その時はまたレースでデムーロ騎手と争っていただきたい。いや、彼等2人だけではない。色々な意味で、ジョッキーの皆が元気に溌溂としたプレーを見せてくれる事を、今年も願っている。