スポーツ百珍BACK NUMBER
今治勢初の選手権と岡田メソッド。
駒野友一の技に学べるという幸福。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph bySatoshi Shigeno
posted2020/01/08 11:30
選手権初出場を果たした今治東高校。岡田氏も見守る中、記念すべき初勝利を挙げた。
今治東が得た満足感と目標。
今治市の人口は約15万8000人。10年前までは決してサッカーどころとは言えなかった地域に、サッカーが浸透していること自体とても意義あることだ。
それとともに岡田氏が「FC今治のユースが強くなったといっても全国から今治になかなか人は来てくれないけど、全国選手権で今治の高校が強くなってくれれば、若者が集まってくれる可能性がある。それほどのインパクトがあるからね」と語ったように、今もなおJユースの大会よりも大きく注目される「選手権」で勝つことが、いち地方のサッカー熱を上げるためには必要なことなのだろう。
翌日に行われた選手権3回戦、今治東は静岡学園相手に0-2で敗れ、ベスト8進出はならなかった。
最終的に全国屈指の強豪との決定力の差を露呈し、後半には個人技術の差が出てややファールが増えた面は否めない。それでも今治東はボールを辛抱強くつなごうとし、前半と後半終盤には何度か惜しいシーンを作っていた。「本当に楽しかったです。静学さん相手にもこれだけできるんだ、というのを見せられました」と試合後に口にした谷監督の笑顔には本音が見て取れた。それは選手たちも同じだろう。
「今治全体で強くなろう、その思いで戦えてよかったです。個人としては選手権に出たことで、プロになれたらという目標ができました。大学に行ってサッカーを続けるとともに、地元に支えてもらったので、最終的にはそこ(FC今治)に入れるように頑張りたいなと思います」
大谷の満足感と新たな目標に、今治市全体が今回の選手権で得た収穫が集約されている気がした。