スポーツ百珍BACK NUMBER
今治勢初の選手権と岡田メソッド。
駒野友一の技に学べるという幸福。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph bySatoshi Shigeno
posted2020/01/08 11:30
選手権初出場を果たした今治東高校。岡田氏も見守る中、記念すべき初勝利を挙げた。
育成で大切な「サポートと1対1」。
まずは過去4度の選手権出場経験のある谷監督だ。
「(岡田氏が観戦に訪れたことについて)スタンドからプレッシャーを感じました(笑)。でも本当にありがたいです。岡田さんからは我がチームのように(今治東を)見てもらっていますから。我々はそれに応えるべくやっていますので。
巡回コーチから共有されている部分は基本的なところですが、育成年代の特に大事にしている攻撃面でのサポート、守備面では特に1対1といったところは伝えていただいてますね。人としてもサッカー選手としても身につけていく事が彼らの将来につながるし、それで育った子がゆくゆくはFC今治で活躍するために我々も育成しているので」
市内全域に渡る取り組みの中で「ちゃんとやれるようになっていますね」と谷監督が名前を挙げたキャプテンの大谷一真は、夏休みに貴重な経験をしている。FC今治のトップチームの練習に加わっていたのだ。
そこではカマタマーレ讃岐(J3)とのトレーニングマッチに出る経験も積み、何よりFC今治に在籍する駒野友一、橋本英郎という名選手の一挙手一投足を見つめることができたのだ。
元日本代表のプレーと姿勢を見て。
「ミニゲームで駒野さんが相手チームのサイドバックをやっていた時のことです。フォワードが走り込んでくるスピードに対してドンピシャのクロスをあげてきて、失点を喫したんです。自分がマークせず、たった1秒でもスキを見せると、そこを狙ってくる。本当のトップの選手だと味わったし、そういった経験を全国大会に繋げられたと思います。
サッカーの部分だけじゃなくて、FC今治のロッカールームでも、駒野さんや橋本さんは違いました。ストレッチや水分の取り方の1つひとつに気を使っていて、どうすれば自分がベストの状態でやれるかっていうのをわかっていました。トップチームの練習にはぼくのほかに長井(季也)と岡本(航汰)が参加したんですが、(今治東の)キャプテンとして伝えていくことが僕の仕事でもあったんです」
ちなみに大谷は選手権出場を決めて以降、橋本から“選手権のような短期決戦を戦うためには、ベンチメンバーとメンバー外を含めたまとまりが一番大事”とアドバイスを受けたという。これもなかなか経験できることではない。
プロの道を目指す強豪校の選手がJリーグクラブの練習に参加するという話は聞くが、今治東は「普通の公立校」である。そんな彼らが日本代表やJリーグで実績を残した駒野や橋本のプレーや行動に直接触れることができる。なんとも夢みたいな話である。
また選手権前のトレーニングでは、FC今治の下部組織が対戦相手のシミュレーションをするのに、相手役を買って出てくれたのだという。そんなクラブと学校間の連携は、これまで選手権の取材に訪れた中でも、なかなか聞いたことがない。