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酒井高徳、神戸へきて「良かった」。
スター選手と日本人を繋ぐ仕事。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byGetty Images
posted2020/01/07 19:00
酒井高徳は神戸にプレー以上のものをもたらした。そして酒井自身も、大きな幸福をこの地で手にすることになった。
語学よりも大切なものがある。
酒井がもたらしたものは、精神面にもある。
「特にね、自分が何かをチームに与えたとは思ってなくて。というのは、みんながなあなあにしてた、(課題が)見えてもなんとなーくやってたところを、ひとりひとりが突き詰めるようになったというのがしっくりくるかな。
練習とかでも、外国人とか関係なくガツガツやってる俺を見て、今まで遠慮してたのが遠慮しなくなったと思うし。その辺の練習の強度だったり要求が、良い相乗効果で全体に広がったのが練習から見ててわかるので、ひとりひとりの意識がかわったなというのが率直な印象です」
ガツガツと遠慮なく練習でぶつかり合う中で理解も深まったことだろうし、1つのチームにもなっていったのだろう。それがチームの成績に直結したことは疑いようがない。
酒井がドイツ語を話せるという問題ではなく、世界的なスター選手と自分が共に戦う仲間だと思うことが必要で、臆せず要求もする。
そんな酒井の姿を見て、遠慮を感じる選手は最近ではいないはずだ。
神戸に来て「よかったです」。
酒井自身にとっても大きな意味のあるシーズンになった。'12-'13シーズンのドイツ杯以来、人生で2度目の決勝の舞台、初めてのタイトル。決勝後にミックスゾーンにきた酒井は、わざわざ目立つように、誇らしげにメダルを首にかけていた。
ここにきてよかったのでは? と尋ねた。
「よかったです」
満面の笑みでそう言った。
周囲を生かし、自分も生きる。充実のJ復帰1年目だった。