花の2区を任されたルーキーの岸本。

　事実、ライバル東海大の2区を務めた塩澤稀夕（3年）も、この時点までの展開についてはこう分析していた。

「1区に東国大の留学生が来ると、青学大だったらそこについていく流れだったと思うんです。でも、結果的に1区に留学生が来なかったので、青学大はそこでエースを使ってしまったことになる。東海大としては非常にいい展開だと思います」

　満を持して切ったエースの札がやや不発気味に終わり、次に待つのは「花の2区」。各校がエース格の上級生を起用して来たのに対し、青学大はルーキーの岸本大紀を配置した。

　想定外の7位スタートという展開に加えて、周りは各校のエースに囲まれる。さらに初めて走る20km超の箱根駅伝と、1年生には非常に厳しい条件が揃っていた。しかも岸本は12月の下旬に左足小指を痛め、3日間練習ができなかったという。出雲駅伝、全日本大学駅伝で好走しているとはいえ、そのままズルズルと後ろに行ってしまう可能性も十分にあった。

「自分の方が余裕はあるんだなと」

　だが、そんな状況にあっても岸本本人は至って冷静だった。

「もともとは留学生が1区に来るのを予想していて、それが理想だったんですけど、その予想は外れてしまった。そこはイレギュラーではあったんですが、それでも圭太さんが先頭からそこまで離れていない位置でたすきを持って来てくれたので、そんなに気にはならなかったですね」

　大会後に涼しい顔でそう語ったスーパールーキーは、淡々とライバル校の反撃の芽を摘んでいった。

「正直20kmまでは全然、キツくなくて（笑）。上りに入ってから『ちょっと足がきつくなってきたな』というのがあったんですけど、呼吸はフィニッシュした後でも余裕がありました。原監督からも自分が1年生で周りが上級生ということもあって『余裕を持って入って安心して走れ。楽しんでこい』という指示をもらいました。なので自分としては気楽に走ることが出来ました。ラスト3kmは周りの選手がめっちゃキツそうで動きも悪くなっていたので、自分の方が余裕はあるんだなというのは分かりました」

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