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実録・無法ウルトラスに潜入(1)
「火薬のデパート」と化すゴール裏。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byTakashi Yuge
posted2020/01/05 11:00
熱狂するレッジーナのゴール裏。しかしその場に行ってみると、想像以上の修羅場だった。
30cmの100連装ロケット花火が!
チャントと怒声に無我夢中で声をからしていた後半、ほんの数m先に置かれた箱に目が止まった。大人でも一抱えありそうな箱の中身を理解した瞬間、血の気が引いた。
高さ30cmの100連装ロケット花火がスタンド最前列と並行にほぼ等間隔で5つ並べられていた。それはもはや花火というより、爆薬の塊だった。
一体どうやったら、連中はこんな物騒なものを用意できるんだ?!
アングラ応援用品が揃う違法サイト。
発煙筒、大小のフラッグ、巨大横断幕……etc。あらゆる応援用品が揃うアングラ違法サイトが調達先だった。当時、アマゾン・イタリアはまだなかった。
違法サイトは、およそ応援に関するものなら何でも売っていた。
色とりどりの各種バルーンや楽器類はもちろん、単価50円もしないナイロン製小旗から巨大なスタンド全面を覆いつくすためのフィルム片7万5千枚セット(総額約350万円)まで、取り扱っていない商品はないのではないか、という充実ぶりで、特に火薬関連商品は色も形も燃焼力も選り取り見取りだった。
最も安価でポピュラーな発煙筒は1本2.7ユーロ(約325円)で、全9色から選べる。製造元によれば煙の持続時間は60秒間だったが、実際にはまちまちだった。
「アウェー」という商品名で缶状のものは、針金の先についたリングを一気に引っ張ると、狂った濁流のように勢いよく濃煙が噴き出す。いささか強力な色付きバルサンだと思ってもらえればいい。
つまり、人間が吸い込めば鼻や喉に深刻なダメージを負う。
他にも、南米発祥で45秒間断続的に閃光を発する特殊型「ストロボ」や、本来海難事故の救援要請用に使われるはずのプロ仕様品も、ゴール裏では珍しくなかった。
“ようやく合法化に成功!”
“一般客への攻撃を目的とするグループにはお売りできません”
果たしてどれだけの人間が、これらのキャッチコピーや商品説明文を“スポーツ観戦の応援グッズ向け”だと認識できるだろうか。
イタリアのゴール裏は、文字通り「火薬のデパート」状態だった。