濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
アイドルでレスラー、そして王者。
渡辺未詩の“素敵な二刀流人生”。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2019/12/31 11:40
ベルト姿&アイドルポーズも様になっている渡辺未詩。防衛戦の後には成人式も待っている。
「勝ち負けより大きいものを得られる」
学生時代ソフトボール部だった未詩は、プロレスの独特なところをこう表現している。
「部活との一番の違いはお客さんがいるかどうか。ソフトボールは結果第一でしたけど、プロレスは見てもらう、喜んでもらうのが大事ですよね。
内容によっては勝ち負けより大きいものを得られることがあるんです。負けたら終わりじゃないし、毎週のように試合があってお客さんの前に立てる経験はアイドルとしての力にもなります」
「プロレスもアイドルも届ける先は一緒」
一時は「ダイエットしたほうが人気が出るのかも」と考えたこともあったが、フィジカルトレーニングによる肉体改造が自信につながったのは間違いない。
「筋肉がついてTシャツのサイズが大きくなりましたね。特に肩幅が変わりました。ドアを通る時に壁に肩がぶつかったりするんですよ。自分の体の幅が把握できてないんです、まだ。ネックレスもしなくなりました、首が苦しくて」
そう言いながらもどこか嬉しそうなのだった。レスラーとして力をつけることは、アイドルの魅力と反比例するものではないと感じるようになったそうだ。
「プロレスもアイドルもお客様に見せるもの。届ける先は一緒なので。アイドルとしては細くて可愛いにこしたことはないんでしょうけど、それを超える何かが見せられればいいのかなって。もともとアイドルが好きだからこそ、今までのアイドルの固定観念を覆すような、唯一無二のアイドルになりたいなって。考えてみたら、それはオーディションを受ける前から思っていたことだったんですよね」
昨年11月、ヒカリと組んでタッグ王座に挑戦したあたりからプロレスへの意識がより高くなったという。今年前半はしばしばメインイベントに出場し、先輩レスラーに敗れながらトップの実力を肌で感じた。
選手数が増えた東京女子プロレスの合同練習は、1年ほど前から2部制になった。主にキャリアでグループを分けているが、未詩は先輩組の練習にも参加している。
「やっぱり先輩から学ぶことは多いので、練習が別々になるのは悔しくて。“見学だけでも”ってお願いして練習させてもらうようになりました」
他の選手のように、もともとレスラーに憧れていたわけではない。プロレスの知識も足りない。それを補うには練習しかないという考えもあった。「努力は必ず報われる」というアイドル界の“格言”を、彼女はリングで証明しようとしている。