濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
アイドルでレスラー、そして王者。
渡辺未詩の“素敵な二刀流人生”。
posted2019/12/31 11:40
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
アップアップガールズ(プロレス)は、2017年に結成されたアイドル/プロレスラーユニットである。オーディションで4人のメンバーが選ばれ、今年1人が卒業して乃蒼ヒカリ、らく、渡辺未詩(みう)の3人体制になった。
アイドルとしては日本武道館公演も行なっているアップアップガールズ(仮)の妹分。レスラーとしては東京女子プロレス所属となる。
メンバー募集の段階から「プロレスとアイドルの二刀流」、「歌って踊って闘えるグループ」だと謳われていた。「人気レスラーがアイドル(CD)デビュー」、「芸能人がプロレスに挑戦」というパターンは珍しくないが、彼女たちはどちらでもないのだ。昼に試合をした後、移動してアイドルフェスに出演したこともあるし、TOKYO IDOL FESTIVALではライブの直後に“路上プロレス”で闘った。
「やってることが新しすぎて、最初はどうすればいいのか、何を目指せばいいのか分からなかったです。プロレスをやってアイドルもやる。そのことだけで精一杯で」
昨年1月4日にプロレスデビューした当時の気持ちを、渡辺未詩はそう振り返った。リングで、あるいはステージで、何度も何度も「アイドルもプロレスも全力でやってます!」と訴える姿が印象に残っている。プロレスファンに「所詮アイドルだろ」という目で見られ、アイドルイベントでは「え、プロレスやってんの?」と苦笑される。まずはそういう扱いから抜け出す必要があった。
“なんでもあり”のマット界を象徴する活動。
本人たちにも戸惑いはあった。未詩とらくはもともとアイドル志望。アイドルになるためにオーディションを受けた。応募した時点で分かってはいたが、プロレスの練習を重ねてデビューが決まる頃には、2人で「どうしよう、ホントにレスラーになっちゃうよ私たち」という会話もしたそうだ。ヒカリは逆にプロレスファンでデスマッチが好きだったから、自分が歌って踊ることに実感がなかった。
3人の奮闘は“なんでもあり”と言っていい現在のプロレス界を象徴するものに思えた。
特に、最初は“習った技を必死で出しているだけ”だった未詩とらくが試合を重ね、ファンの声援を受けてプロレスの楽しさに目覚めていく姿は新鮮でもあった。プロレスはどんなジャンルなのか、どう面白いのかを彼女たちと一緒に再発見したような気がしたものだ。。