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「フツーの人」として過ごす沖縄で、
エディーさんが語った「次の準備」。
posted2019/12/28 09:00
text by
朴鐘泰Park Jong Tae
photograph by
Takuya Sugiyama
双眼鏡の向こうに見えるエディーさんは、なんとも複雑な表情を浮かべていた。
11月2日、2019年W杯決勝後の表彰式。12-32、王者南アフリカから1トライも奪えなかった敗軍イングランドの将、エディー・ジョーンズは表彰台から下りると、ゆっくりと銀メダルを首から外した。
準々決勝ではニュージーランドに完勝を収め、下馬評は「イングランド有利」だった。ヘッドコーチとして臨む2度目のW杯ファイナル。2003年大会では母国オーストラリアを率いて、天才キッカー、ジョニー・ウィルキンソン擁するイングランドに17-20で敗れている。
16年の時を経て、再び目の前に現れた「世界一」のチャンス……だが、なす術なく、無残に敗れた。
最高の舞台で、最悪の敗北を喫した名将は、何を思ったのだろうか。そして、彼が率いた'15年大会以上の躍進を遂げた日本をどのように見ていたのだろうか。エディーさん本人にその胸中を確かめる機会は、思ったより早くに到来した。
スイッチオフ、闘争心ゼロ。
12月某日、沖縄。最高気温27度を記録したその日、リゾートホテルの一室に現れたエディーさんを一目見て、思わず頬が緩んでしまった。
スイッチオフ。闘争心ゼロ。あんなにニコニコしているエディーさんを見るのは初めてだった。「なぜここ(沖縄)なんですか?」と聞くと、茶目っ気たっぷりにこう返された。
「ここだとフツーの人になれるからね」
聞けば、4年ほど前からオフは温暖な沖縄ですごすようになったという。ただリフレッシュするだけでなく、自身の健康維持のため、トレーニングも欠かさない。そういえば、日本代表ヘッドコーチ時代も、エディーさんは都内のジムに通っていたことを思い出した。