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デビューは420kg台→有馬で468kg。
成長し続けた名牝リスグラシュー。
posted2019/12/25 07:00
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph by
Satoshi Hiramatsu
12月22日に行われた有馬記念(GI、中山競馬場、芝2500メートル)を制したのはリスグラシュー(牝5歳、栗東・矢作芳人厩舎)だった。
騎乗したダミアン・レーン騎手の父、マイケル・レーン氏はオーストラリアで調教師をしており、偶然にもこの有馬記念とほぼ同時刻に現地で管理馬が優勝をした。しかし……。
「父は自分の馬どころではないと喜んでくれました」
レーン騎手はそう言って笑ってみせた。
話は2カ月ほど前のオーストラリアまで遡る。10月26日、かの地のムーニーバレー競馬場。リスグラシューはここで行われる南半球最大の中距離GIの1つであるコックスプレート(GI、芝2040メートル)に出走した。レース前のパドック脇で、矢作調教師は語った。
「すごく落ち着いていてこちらがビックリしています」
173mの短い直線で一気に差し切り。
リスグラシューが初めて海外へ遠征したのは2018年12月の香港。香港ヴァーズに出走し、地元の雄エグザルタントの2着に敗れたわけだが、当時との比較を指揮官は口にして、続けた。
「初めて香港へ行った時は落ち着きを欠いてしまい、まずリラックスさせるのに苦労しました。それを思うと、同じ馬とは思えないほど。年齢的な成長に加え、彼女自身、経験を積んだ事で精神的に別馬のようになっています」
結果は皆さんご存知の通り。レーン騎手を背に後方から進んだリスグラシューは僅か173メートルというムーニーバレー競馬場の短い直線をモノともせず、一気に差し切り。前走の宝塚記念に続くGI制覇を念願の海外で成し遂げてみせた。
「強かったですね。もちろん勝負にはなると思っての挑戦でしたけど、こちらの考えていた以上に強かった。リスグラシュー自身が私の考えている以上に素晴らしい馬になっていたという感じです」
レース直後、興奮冷めやらぬ表情で矢作調教師はそう語っていた。