沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
有馬記念を完勝したリスグラシュー。
アーモンドアイとの差は10馬身以上。
posted2019/12/23 11:50
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
Yuji Takahashi
史上最強の「女傑対決」に沸いた令和最初の有馬記念を制したのは、これがラストランとなる5歳牝馬だった。
レース史上最多の11頭のGI馬が揃った第64回有馬記念(12月22日、中山芝2500m、3歳以上GI)を、ダミアン・レーンが騎乗した2番人気のリスグラシュー(牝5歳、父ハーツクライ、栗東・矢作芳人厩舎)が優勝。
GI通算4勝目、今年のGI3勝目(JRA・GIは2勝目)を挙げ、年度代表馬の座をほぼ確実にした。
なお、単勝1.5倍の圧倒的1番人気に支持されたアーモンドアイは9着に終わった。
まさに圧巻の走りだった。
道中、中団のインに控えたリスグラシューは、直線入口で外に持ち出されると一気に加速。ラスト200m付近で内の馬たちをかわすと、見る見るうちに差をひろげ、2着を5馬身突き放してフィニッシュ。ラストランを春秋グランプリ連覇で飾った。
レーンの短期免許は切れていたが。
アーモンドアイが失速して静まりかけていたスタンドから驚愕の声が上がった。
最後の7、8完歩は流す余裕があり、勝利を確信したレーンが左手を挙げたままゴールを駆け抜けた。
「4コーナーで手応えがよすぎて、スペースが必要だったので、外に出しました。そこからは馬の能力に任せました。前にいる馬が相手で、後ろから差せる馬はいないだろうと思いました。ぼくが乗った馬で一番強いし、世界一になる可能性もあると思う。これほど素晴らしいレースを勝つことができた喜びと、これで引退などいう寂しさがミックスされた気持ちです」とレーンは振り返る。
4コーナーの出口では最内付近にいながら、そこからの10完歩ほどで馬6、7頭ぶん外に持ち出した技術は素晴らしかった。短期免許の有効期限は切れていたのだが、同一年にJRA・GIを2勝以上した馬がGIに出る場合、一日限定の免許が交付される。今回は、日本で馬券を発売した豪州GIコックスプレートもカウントされ、認められた。
「ファンがリスグラシューの騎手として望むのはレーンだろう」と考え、JRAに働きかけた矢作芳人調教師のファインプレーだった。