しっかり調教後も「10kgくらい増えている」。

　しかし、この有馬記念のレース前、矢作調教師からの驚きの発言を耳にした。

「宝塚記念と比べておそらく10kgくらい体が増えていると思います」

　宝塚記念の後、オーストラリアを往復して1戦してきた。有馬記念の1週前追い切りにあたる12月11日には坂路で半マイル51秒6、最終追い切りとなった18日は更に早い51秒3で追われていた。

　これだけしっかりと調教を積んでいるにもかかわらず「10kgくらい増えている」と言う。そして、実際、発表された体重は468kgで、宝塚記念より8kg増。デビュー当初は420kg台でも走っていた牝馬が、キャリア22戦目となるラストランの舞台で過去最高馬体重をマーク。それもしっかりと調教をした上での体重増なのだから、太いのではなく、肉体的な成長があったとみてとれたわけだ。

　5歳の秋に心身ともに本格化。これが父ハーツクライの成長力なのか、終わってみれば2着のサートゥルナーリアに5馬身もの差をつけ、レーン騎手がゴール前で早々に左手を挙げる楽勝ぶり。まるでアーモンドアイから年度代表馬と史上最強牝馬の座を力づくで奪い取るような走りを披露してみせた。

「歴史的名牝だと思います」

　伯楽はそう言った。贔屓目無しにみても、その言葉は的を射ていると言って良いだろう。