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スポーツクライミング2019→2020
この選手に注目!(総まとめ・女子編)
text by
津金壱郎Ichiro Tsugane
photograph byAFLO
posted2019/12/25 11:30
大型クライマー・中川瑠も登場。
一方で、新たなW杯日本代表を狙う選手たちも、来年2月に照準を絞ってトレーニングに励んでいる。注目したいのが、国体で好成績を残した選手だ。毎年10月に開催される国体で成績上位に飛躍した選手は、翌年のBJCで好成績を残すケースがある。昨年なら成年女子個人3位になった大河内芹香がBJCで7位に躍り出て、W杯日本代表入りを果たした。
今年の茨城国体のボルダリング個人成績は成年女子1位が倉菜々子(愛知)、2位に野口啓代(茨城)、3位に小林由佳(茨城・現日本代表コーチ)、4位に中村真緒(東京)が名を連ね、それに続いたのが福岡県の23歳・新嵩萌香。昨年の個人13位から5位へステップアップした勢いを、BJCにつなげたいところだ。
森秋彩(茨城・高1)が決勝1位になった少年女子では、2位に滝口萌(福島・高1)、3位には菊地咲希(東京・高2)、4位には平野夏海(東京・高2)、5位には中川瑠(大阪・高1)が入った。
BJC初出場が有力な滝口萌や、2年ぶりにBJC出場権を手にしている身長170cmの大型クライマー・中川瑠が、W杯日本代表を争う舞台でどんなパフォーマンスを見せるかは楽しみなところだ。
ユース世代で期待される菊地咲希。
ユース世代で活躍が予想されるのが、菊地咲希だ。身長154cmながらも、スラブでも強傾斜でも抜群のセンスを誇る。今季は世界ユース選手権ボルダリングで銅メダルを獲得したものの、W杯日本代表に名を連ねながらも派遣されなかった悔しさを持つだけに、2年ぶりのW杯ボルダリングへの強い想いをBJCの舞台で爆発させるはずだ。
ほかにもBJC出場予選として導入された『ジャパンツアー』の上位選手たちも見逃せない。ボルダリングツアーランキング最上位につける松藤藍夢(あのん・神奈川・高1)と、2位の青柳未愛(みあ・東京・高1)の両選手はともに2003年生まれの“森秋彩世代”。東京や神奈川は選手層が厚いために今年の国体出場はないものの、実力は国体代表に迫るまでに成長している。
10代の選手たちは1年といわず、わずかな間に急成長を遂げることが少なくない。しかも、競技会ならではの課題に対する適応力も若い選手ほど高い。彼女たちの突き上げに飲み込まれた選手から、W杯日本代表入りの道が閉ざされていくと言っていい。
オリンピックイヤーを迎えれば、国内の頂点に君臨する野口啓代への注目は否応なしに高まっていくだろう。しかし、彼女の切り開いた道を追う若い年代の選手たちのなかに、5年後のパリ五輪でも実施が有力なスポーツクライミングの日本代表がいることも忘れないでもらいたい。新たなドラマもまた、来シーズンから始まりを告げるのだから。