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当初はコーチ、QBが拒絶反応も……。
日大アメフト部と新監督の1年半。
text by
杉山孝Takashi Sugiyama
photograph byKiichi Matsumoto
posted2019/12/06 20:30
タックル騒動を経てTOP8復帰を果たした日大アメフト部。橋詰監督のもとでの1年半は、あまりに濃いものだった。
どうあがいても甲子園には届かない。
村田コーチも新監督に根負けした。
「本当にすごく長い時間、話し合いましたね。たまに熱くなったりしましたけど、本当によく付き合ってくれました」
今年9月、日大は関東学生アメリカンフットボール連盟から認められ、1部TOP8からBIG8へと降格になっていたものの、昨年は出場できなかったリーグ戦に復帰できた。初戦は89-0と完璧なスタートを切ったが、その後はそれほどの点差が開くことも、無失点に抑える試合もなくなった。
開幕から1カ月後、橋詰監督が「やはり一番難しいですね」ともらしたのが、モチベーションの問題だった。BIG8を戦うチームは、甲子園ボウル出場権を争えない。どうあがいても、学生たちが日大の門を叩く理由であった「日本一」には届かないのだ。
10月中旬の国士舘大学戦ではミスが続き、橋詰監督は珍しく怒りをあらわにした。気持ちに変化を起こすにはどうすればいいのか。1週間の練習プランを見直した。気持ちが盛り上がる「2ミニッツ」の練習が増えたのも、この頃のことだった。
全勝優勝を目指した試合での苦境。
連勝はしていた。ラスト2試合となり、問題となったタックルをしてしまった選手も、検察による不起訴処分が決まり、部で決めた自粛から解かれてついに試合に戻ってきた。だが、ブランクを感じさせたその選手同様、チームも完全燃焼には遠かった。
そうして迎えた桜美林大学との最終戦。勝てば、全勝優勝となりTOP8復帰が決まる。
そんなプランが、打ち砕かれそうになった。
これまでとまったく違うプレーをする桜美林大学に、日大のスカウティングが逆手に取られた。日大の攻撃も順調だったが、前半から惜しげもなくスペシャルプレーを連発する桜美林大に食らいつかれる。24-24の同点で第4クォーターを迎えるとは、ほとんどの人が予想していなかったはずだ。