熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
飛行機墜落から3年、降格で再び涙。
財政難シャペコエンセは甦るのか。
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byGetty Images
posted2019/12/08 20:00
浦和レッズが2017年に対戦した際にはシャペコエンセを励ます横断幕も出た。苦境にあるチームだが、復活を期待したい。
直後は過去最高の成績を残した。
しかし、シャペコエンセは涙を振り払って立ち上がる。プリニオ・デ・ネスが新会長に就任し、クラブ、市、市民が一体となってクラブとチームを並行して再建するという難事に取り組んだ。
この姿を見て、他クラブが助けの手を差し伸べる。所属選手を無償で移籍させ、時に給料の支払いまで申し出た。かつてこのクラブでプレーした選手たちが、所属クラブとの契約を解除して戻ってきた。
こうして2017年のシーズン開幕までに何とかチームを編成する。州選手権で優勝し、クラブ史上初めて参加したコパ・リベルタドーレスでも奮闘(グループステージで2位と僅差の3位)。セリエAでは、有力クラブが「3年間、降格させないという特例を設けよう」と提案したが、デ・ネス会長は「気持ちはありがたいが、そんな特例はいらない」と拒絶。大方の予想を覆し、過去最高の8位という見事な成績を残した。
飛行機事故の補償が財政を圧迫。
その一方で、クラブには暗い影が忍び寄っていた。裁判所が事故で犠牲となった選手、関係者らの遺族への補償を命じ、この負担がクラブの財政を急速に圧迫してゆく。
昨年は、州選手権で優勝を逃し、セリエAでも大苦戦。常に下位に低迷し、最終節で勝って辛うじて残留を決めた。
しかし、シーズン終了後に主力選手の多くが流出。財政難のため、補強もままならない。
今年は、4月から選手の肖像権(通常、報酬の約半分を占める)の支払いが滞り、危機的な状況を迎える。8月末から10月末まで13試合勝ち星がなく(5分8敗)、最下位に転落。3節を残して降格が決まった。
財政悪化とチーム低迷の責任を取って、デ・ネス会長が辞任。パウロ・マグロ副会長が会長に昇格し、「1年でセリエAに戻る」と宣言した。
犠牲者遺族への補償は今後も続き、クラブを取り巻く状況は極めて厳しい。
まずは、クラブ、市、市民がこれまでにも増して一致団結し、パラオーロ前会長がやったように財政を根本的に立て直さなければならないだろう。