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SBドラフト2位東海大・海野隆司に
スカウトが重ね合わせた名捕手の姿。
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2019/11/20 11:40
関西大に敗れ、悲願の日本一を逃した東海大・海野隆司。甲斐拓也のような信頼される捕手を目指してプロの世界に進む。
「藤井さんの教えがあったので」
このルーツは岡山・関西高校時代にある。
海野は同校で長らく指導する熱血漢の藤井奏(ゆたか)コーチのもと、塁間で投げる球の強さ・速さ、ワンバウンドを体でしっかりと受け止める技術を磨いた。加えて「投手が一番投げやすいように」という気配りの重要性を叩き込まれた。今でもそれを大切にする。だからこそ、どんなに細かな仕事でも決して怠らない。ここが荒金スカウトがいう「人間性」だろう。
「高校時代の藤井さんの教えがあったので、大学に入ってから守備で苦労することはありませんでした」(海野)
ただ、同じ指導を受けても皆がそうなれるわけでもないのも事実。藤井コーチは「そう言ってくれてこちらが感謝しているくらい。指導者の力なんて大したもんじゃありませんよ」と海野の人間的な強さを評価していた。
それは東海大の安藤強監督も同じだ。監督就任直後の一昨年春に、当時2年生だった海野を正捕手に抜擢した。Hondaの監督として都市対抗を制覇し、侍ジャパン社会人代表の監督も務めていた名将は、肩の強さに加え「高いモチベーションがありますし、ミスをしても強気なところがありました」と精神面を買っての起用だったことを、以前明かしていた。
信頼されるキャッチャーを目指して。
海野のプロでの目標は「海野じゃなきゃダメだ」と信頼される捕手になること。荒金スカウトも「投手が信用して投げられる捕手。海野だとなんか据わりが良いよねという捕手になってほしいです」と期待を込める。
来季からの同僚には、球界を代表する捕手の1人である甲斐拓也がいる。ドラフト指名直後の会見でこんな発言もあった。
「自分の憧れでもある甲斐選手のいる球団。“追いつけ追い越せ”という精神でプロ野球の世界に覚悟を持って入りたいです」
スカウトや熱血漢、名将を唸らせてきた「人間力」は、プロを生き抜く上で、強肩や技術面以上の強みになっていきそうだ。