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カリアリ躍進でサルデーニャ熱狂!
野獣ナインゴランも激しく吠える。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2019/11/14 19:00
強面でオーラ全開のナインゴラン。カリアリ復帰でサルデーニャ島は熱く燃え上がる。
ロッカールームに猛獣を放り込んだ。
今季のチームには、才能がありながら前所属先で燻っていたGKオルセン(前ローマ)にMFログ(前セビージャ)、FWシメオネ(前フィオレンティーナ)ら個性派が集められた。
マランの下でそれぞれ角がとれた彼らは、ベテラン司令塔チガリーニや新加入ナンデスも交え、小気味よくボールを繋ぐようになった。実戦でもあらゆるデュエルに競り勝ち、地を這う正確な高速パスで相手守備陣を翻弄する。
だが“マラン再生工場”最大の眼目は、かつて島のアイドルだったMFナインゴランの処遇だった。
指揮官自ら「サッカーをする野獣」と呼ぶファイターは、地方クラブのレベルを超えた強力無比の戦力だが、我の強さはリーグ随一。王様扱いしないとチームの和を乱す可能性もある。何しろ、あの鬼軍曹コンテが俺の手に余るとインテルから放り出した難物だ。
マランは田舎クラブだからこそできる、落ち着いたロッカールームに猛獣を放り込んだ。インテルで構想外になったとはいえ、欧州カップ戦出場を争うレベルのクラブからも引く手数多だったはずのナインゴランが、悪性腫瘍と戦う妻のために移籍先を彼女の故郷カリアリに決めたことも知っていた。
「島の皆はわかってくれるはずだ」
6シーズンぶりに戻った古巣のロッカールームで、野獣は昔と比べて疲労回復にかかる時間が長くなったことに気づく。粋がる若手の姿にかつての自分を見出すこともあった。野獣はほんの少し殊勝になった。
主将チェッピテッリの怪我でキャプテンマークを託されるようになったナインゴランは、昔とは異なる暴れ方をするときが来たことを悟る。
「俺はインテルから来てやったぜ、と好き勝手許してもらおうなんて思っちゃいないし、ファンに媚びを売って応援してもらおうって柄でもない。ただ、カリアリのために全力を尽くせば、島の皆はわかってくれるはずだ。そう思っている」
8節スパル戦で豪快に今季初ゴールを叩き込むと、フィオレンティーナ戦でも3アシストの後、唸るような30mスーパーミドル弾をぶち込んだ。