東京五輪仕事人BACK NUMBER
東京五輪のメダルをデザインした人。
構想1週間、作業時間はわずか半日!
text by
芦部聡Satoshi Ashibe
posted2019/11/11 10:00
川西純市さん。
決勝戦のチケットを買ったものの……。
その後、真鍮で作った試作品をもとに最終審査がおこなわれ、川西さんの作品が選ばれた。昨年7月のことである。
「冬に開かれるIOC理事会でトーマス・バッハ会長が了承するまでは正式決定ではなく、“内定”だから公表しないようにと……生殺しですよ(笑)。その間に大阪造幣局に伺って、制作途中のメダルを見せてもらいました。実物の直径は85mmですが、担当者が持ってきたのは直径30cm程度の石膏。細部の精度を高めるために、約3倍の大きさの石膏をミクロン単位で手彫りしたものを立体スキャンして、金型を起こすという作業工程を見て驚きました。選手の首に掛けられるときは裏面が見えないことが多いと思いますが、最高峰の工芸技術が惜しげもなく注ぎ込まれているということを多くの人に知っていただきたいですね」
川西さんには金メダル……ではなく、賞金100万円が贈られるという。
「開会式に招待していただけることになっていますが、選手の首にメダルが掛かった姿を見られないのは残念ですね。自分で申し込んだ決勝戦の入場券は、すべて外れてしまったし……この目で見たかったなあ」
手塩にかけたメダルは、ぜひテレビで!
川西純市かわにしじゅんいち
1967年8月1日、大阪府大阪市生まれ。'90年に大阪芸術大学芸術学部美術学科卒業、'92年大阪芸術大学美術専攻科修了。ランドスケープ設計事務所やサインメーカーに勤務した後、'06年にデザイン事務所を設立。表示や案内図などのサインデザインに携わり、オフィスやホテルなどの商業施設、学校や役所などの公共施設のサイン計画、空間グラフィックを手掛けてきた。公益社団法人日本サインデザイン協会常任理事、大阪デザイン団体連合理事を務める。デザイン事務所・SIGNSPLAN代表。