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<エールの力2019 vol.4>
白濱僚祐「試合の流れを呼ぶ大歓声」
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph byAKITA NORTHERN HAPPINETS
posted2019/11/25 11:00
残り1秒で逆転、悪夢の一日。
そんな秋田のホームが、失意に包まれた悪夢の一日がある。
2017年5月14日。このシーズン、B1残留プレーオフにまわった秋田ノーザンハピネッツは、1回戦で横浜ビー・コルセアーズと戦った。
前日の第1戦に惜敗した秋田ノーザンハピネッツはこの日、第2戦を1点差で辛勝。1勝1敗のタイに持ち込み、勝負は5分ハーフの特別ルールで行なわれる第3戦にもつれ込む。
腰痛を患っていた白濱は、運命の一戦をアリーナの片隅から見守っていた。だが彼には、大激戦となった1、2戦目の記憶がほとんどない。第3戦にあまりにもショッキングな結末が待っていたからだ。
第3戦、秋田ノーザンハピネッツは前半で快調に得点を稼ぎ、12対5とリードする。
「これは行ける!」
アリーナには、そんな空気が漂い始めた。
「第2戦に勝った勢いもあって、ぼくらは自分たちにアドバンテージがあると思っていました。そして実際にリードして、“よしよし、この調子で行けば”と。それが最後の最後にひっくり返されてしまったんです」
衝撃の結末だった。2点リードの残り1秒から3ポイントを決められ、その瞬間に試合終了。B2降格が決まったのだ。
ファン感謝祭への重い足取り。
「まさかの幕切れに、頭の中が真っ白になりました。ぼくたち選手がそうなんですから、ブースターの方々はなおさらショックだったと思います」
悪夢のブザービーターとともにシーズンは終わり、7日後、白濱とチームメイトはファン感謝祭に出ることになった。
当然、気は進まなかった。
終了間際の逆転劇は、まだ尾を引いていた。ブースターたちも心の傷は癒えていないだろう。
「どんな顔で、みんなの前に立てばいいのだろう……」
会場に向かう足取りは重かった。