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ウッズ82勝目。歴史に並んだのは、
「僕」ではなく「僕ら」だ。
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byTakuya Sugiyama
posted2019/10/29 20:00
近く見えた時期、届かないように見えた時期を乗り越えて、タイガーは82勝目を日本で手にした。
キャリアの終焉を感じたこともあった。
「82」という数字を現実的に意識し始めたのは「50勝を挙げたころからだった」とウッズは言った。60勝目、70勝目と順調に数字は増えていった。
「でも、それからは腰の手術を何度も受け、試合で戦えないことが何年も続き、82には手が届かないと思えていた」
その通り、ウッズの勝利数は2013年に世界選手権シリーズのブリヂストン招待を制した際の「79」という数字から、長い間、動かなかった。
度重なる腰の手術とリハビリ生活の繰り返し。私生活における曲折もあった。逮捕劇の際はキャリアの終焉を誰もが想像し、あのころはウッズと「82」は、もはや結びつかないものと化していた。
「だけど、4度目の腰の手術のおかげで、戦線にカムバックできた。高いレベルで再び戦えるようになった」
ツアー選手権、マスターズ、そして。
昨秋、米ツアー最終戦のツアー選手権を制し、ウッズの勝利数は「80」になった。それは、止まっていた数字が5年ぶり、1876日ぶりに動いた瞬間だった。
そして今年4月、マスターズを制し、メジャー勝利数は「14」から「15」になり、通算勝利数は「81」になった。
だが、以後はまたしても苦しい日々になった。残る3つのメジャーではまるで振るわず、レギュラー大会には出ることすらままならず、世界ランキングもフェデックスランキングも下降していった。
プレーオフ・シリーズには出場できたものの、上位30人に限定される最終戦のツアー選手権には進出できず、ディフェンディングチャンピオンでありながら、戦いの場につくことさえ叶わなかった。
その悔しさを紛らわせるかのように、ウッズはその週、生涯5度目となる左膝の手術を受け、またしてもゴルフクラブを振ることができない日々へ突入。
ZOZOチャンピオンシップへの出場も一時は疑問視されていた。なんとか直前5週間で大急ぎで準備を整え、日本にやってきた。