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ジョコビッチよ、俺と練習してくれ!
有明で叶った嘘のようなホントの話。 

text by

雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph byIori Yoshida

posted2019/10/20 20:00

ジョコビッチよ、俺と練習してくれ!有明で叶った嘘のようなホントの話。<Number Web> photograph by Iori Yoshida

ジョコビッチ(右)と2ショットに収まる吉田伊織。世界No.1プレーヤーと夢のような時間を過ごした。

セルビアへ留学、現在はYouTuber。

 吉田は11歳の頃、父親の仕事の関係で住んでいたシンガポールでテニスを始め、帰国したあとに15歳でセルビアにテニス留学した。

「2011年にジョコビッチ選手がいきなりナダルと(ロジャー・)フェデラーに勝ち始めて、当時の彼の眼とか、野獣のオーラを見ていたら、これはセルビアに行くしかないと。彼になりたいという思いでした」

 中学時代に全国大会出場経験もない。周囲には「日本で勝ってないのに行く意味がない」という声も多かったが、情熱と行動力で渡航に踏み切り、4年間をセルビアで過ごした。

 帰国後は指導者の資格を取った上で、プライベートレッスンを行うなどして活動資金を稼ぎ、友人の助言を受けて今年5月からYouTuberとしての活動を始めた。個人スポンサーの支援、動画での収入、ときには解体業のアルバイトをしながら費用は賄ってきた。

 そして、6月にアップしたのが、ジョコビッチにセルビア語で猛烈なテンションで「5分でいいので練習してください」と呼びかける動画だった。

セルビア語を喋れる日本人がいたら。

「たとえば僕がスペイン語を喋れたとして、ナダル選手と練習したいと言っても叶わないと思う。スペイン語を喋る日本人はたくさんいるから。ナダル選手もそれを見て面白がらない。セルビアという小さな国で、セルビア語を喋れる日本人がいて、本気で練習したいという人間がいたら、ジョコビッチなら絶対に目をつけてくれると思っていたんですよ。彼はエンターテイナーだから」

 吉田にいくら自信があって、ウェブ上に国境はないとはいえ、その動画が簡単にジョコビッチ本人の目に触れるはずもない。そこはオンラインではなく、対面の関係性が必要だった。直接の橋をかけてくれたのは知り合いの日本人プロである。

 大会期間中、出場選手の練習パートナーを務めていた田沼諒太が、会場で本人に吉田の動画を見せてくれた。そこからはとんとん拍子。大いに面白がったジョコビッチと、その日の夜には「明日練習ができそうだ」というところまで話が進んだのである。

 しかし、相手はテニス界の頂点に君臨するスーパースター。最後まで何があるか分からない。

「ジョコビッチ選手は世界1位だし、キャンセルも全然あると思っていました。お昼のウォーミングアップの時に、カートで移動するジョコビッチ選手に声をかけたんです。『Nole!Nole!(Noleはジョコビッチの愛称)』って呼びかけて『あとでマジでお願いします』と言ったら、『あとでな』とセルビア語で言われて」

【次ページ】 「俺のお肉はデカイぞ」

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