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曹監督の退任、そして湘南の苦境。
クラブとしてハードワークで再建を。
posted2019/10/09 11:50
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Getty Images
いまこそ、原点に立ち返るのだ。
いまこそ、ハードワークをしていくのだ。
湘南ベルマーレの曹貴裁監督の退任が、10月8日に発表された。
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曹前監督が問われていたパワーハラスメント疑惑について、Jリーグが10月4日に回答を示した。4人の弁護士による調査チームがJリーグ側に提出した報告書の要約版が、18ページの文書として公開されたのである。村井満チェアマンと調査チームの弁護士が、同日午後に記者会見を開いた。
そもそもパワーハラスメントとは、どのような言動を指すのか。2018年3月に厚生労働省が示した『職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会報告書』は、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義する。
およそ60人の選手と関係者へ聞き取りが行われ、調査チームは上記の定義に照らして「同じ職場で働く者に対して、優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えた」行為があったと認定した。
映像や音声などの物的証拠はないものの、複数人の証言が得られているとして、曹前監督のトップチームスタッフと選手に対する言動はパワハラに該当する、ということである。
資金力の不足にひるまず。
1999年の消滅危機を乗り越えて再生したベルマーレは、'18年春にライザップグループの傘下に収まるまで親会社を持たなかった。資金力には恵まれていなかった。
それでも、フロントと曹前監督は「資金力で劣るからいい選手をなかなか獲れない、だから守備的に戦って勝点を拾っていくしかない」といった思考に陥らず、攻撃にも守備にもアグレッシブなサッカーを追求していく。J1に昇格しても一貫性を保ち、J2降格を経験してもJ1に這い上がっていった。
プロ入り前に脚光を浴びていなかった選手、他クラブで力を発揮しきれていなかった選手が強豪クラブに立ち向かっていく姿は、“湘南の暴れん坊”と呼ばれていたJリーグ黎明期の遺伝子を再び立ち上がらせるものであり、勝敗を超えた魅力を生み出していった。
スタッフと選手に真正面から向き合う曹前監督は、2012年の就任からベルマーレに独自の価値観を植え付けていったのだった。