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堀米雄斗の腹筋がもつ説得力。
スケボーのアスリート性とは。 

text by

雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

PROFILE

photograph byMURAKEN

posted2019/10/13 08:30

堀米雄斗の腹筋がもつ説得力。スケボーのアスリート性とは。<Number Web> photograph by MURAKEN

五輪レースでは2位。白井空良や青木勇貴斗ら日本の後輩だけでなく、世界中からマークされ、追われる存在になっている。

競技者と同時に表現者でないと評価されない。

 その頃、堀米に「お前の夢ってなに?」と尋ねたことがあったという。

「向こうでプロになって、プライベートなパークと家を建てたい」

 立本には単なる子供の空想とは言えない“夢の強さ”が心に残った。

「たぶん小5か小6だったはずだけど、初めてだったんですよね。夢が固まっている小学生って。たぶん今だって、そんな子はいない」

 20歳となった堀米はその宣言通りに夢を叶えつつある。ブレない大志がここまでの成功を後押ししてきたのだ。

 スケートボードに一般的なスポーツと異なる面があるとするなら、コンテストの結果だけでなく街中で撮影した独自の映像作品を評価されてこそ超一流ということである。スケーターは競技者であると同時に表現者でもなければいけない。

 堀米の中にも当然、そうした価値観は共有されている。

「コンテストも映像も同じように大事です。自分のスタイルの中でどれだけカッコよく見せて、オリジナリティーのある滑りを見せられるかってことですね」

過程ではなく、作品こそがすべて。

 ポール・ロドリゲスやシェーン・オニールら海外のトップスケーターの映像を見て学び、立本ら先輩たちから実際の撮影技術や考え方も学んだ。ライダー目線でなく、時には撮影者の目線を持って滑ってみる。スケートボードに不可欠な唯一無二の個性をいかに構築するか、魅せるかを考える。そうした試みが新しい発見につながっていった。

 立本が振り返って言う。

「一緒に撮影していると、雄斗が『この角度で撮ってほしい』とか言うようになってきたんです。そこからですね、技術がバチンと伸びだしたのは。映像を撮ることにハマって、中3ぐらいで堀米雄斗というライダーは覚醒していったと思います」

 今季序盤、堀米はかかとの怪我に苦しみ、十分な滑り込みができず苦戦した。だが、インタビューでそのことを尋ねると「そういうことはあまり言いたくないので、無しで」と口をつぐんだ。

 過程ではなく、できあがった“作品”こそがすべて。意地を張る姿からは、負けず嫌いな競技者の一面と同時に、表現者としての堀米の美学までが垣間見えた。

堀米雄斗Yuto Horigome

1999年1月7日、東京都生まれ。6歳からスケートボードを始め、高校卒業後に渡米。2017年からSLS参戦。'18年に初優勝。ノーズ側の足で踏み切るノーリー系のトリックを武器に、今年もSLSやXゲームで優勝しており、五輪出場権レースでは10月時点で2位につけている。170cm、55kg。

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