武蔵丸の辛口御免 Oh!相撲BACK NUMBER
横綱不在も優勝争い楽しめた秋場所。
武蔵丸が楽しみにする若手は誰だ?
text by
武蔵川光偉Musashigawa Mitsuhide
photograph byKyodo News
posted2019/09/25 19:00
関脇の御嶽海が通算2度目の優勝を果たした秋場所。千秋楽での優勝決定戦では見事に貴景勝を寄り切ってみせた。
ベテランの引退と若手の躍進。
これまた優勝戦線に絡んでいた朝乃山だけど、途中から疲れていたように見えたな。
技術的なことを言うと、立ち合い、右でかちあげて行くけれど、あまりうまくないんだよなぁ。体を横にずらし気味で当たる。もっと体をまっすぐにして当たらないと。それと、もうちょっとかちあげる方の肩を落としてね。浮いちゃってるんだヨ。そうやって体でぶつかって行けば、もっと威力が増す。稽古で意識していけばクセは直るはずだよ。
負けてもいい相撲で、逃げない相撲を取る。これからまだまだ楽しみだな。
明生もいいね。これからもっと出てくる力士だと思う。まだ幕内の雰囲気に慣れてないんだと思うけど、彼も逃げない相撲だし、これからは明生が来るよっ(笑)。
ベテランの嘉風が引退したけれど、元気な相撲を取ってかき回してくれる、僕の好きなタイプだった。どういう相手でも逃げないで向かってゆくしね。稽古場以外でのケガでの引退だと聞いたけれど、土俵の上で最後の姿を見たかったな。
弟弟子の友風にバトンタッチだけれど、その友風は、「アドバイスをもらった」と嘉風の名前をずっと出していた。休場してリハビリしていた兄弟子を元気づけようと思ってもいたのだろうけど、あまりよくないんだ。嘉風本人も引退会見で僕と同じことを言っていたと聞いたけど、やはり相撲は師匠の教えを大事にする世界だから、兄弟子の名前ばかり出してもいけない。
嘉風も、引退後はきっといい親方になってくれると思う。本当にお疲れさまでした。今まで、元気な相撲で楽しませてくれてありがとうな。
最近では一番の場所だった、と。
横綱ふたりが休場したけれど、やはり横綱土俵入りがなくてお客様は残念だろう。
鶴竜の場合、場所中に急逝した師匠の病状も心配で相撲に集中できなかったのでは? と思うファンもいるだろうけれど、そこは違うんだよ。それなら尚更、病床で戦っている師匠のためにも、土俵でいい相撲を見せて、少しでも元気づけようと思わなければ……。辛いけど、それが力士の世界でもあるんだ。
しかし、今場所は両横綱がいなくとも、2年ぶりの優勝決定戦があったり、最後まで優勝争いが面白かった場所だった。最近では、一番の場所だったとさえ思うんだ。
11月の九州場所は、横綱ふたりも万全で出て来てほしいし、御嶽海の大関取りや若手の活躍などでいっそう見応えのある場所になるかな。
(構成・佐藤祥子)