話が終わったらボールを蹴ろうBACK NUMBER
松井大輔が目をかけるドリブラー。
横浜FC・松尾佑介は五輪を目指す。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byGetty images
posted2019/09/25 18:00
東京五輪世代の前線はタレントの宝庫だが、松尾佑介もまた際立つ個性を持っている。
東京五輪の攻撃陣争いはあまりに熾烈。
松尾への期待が膨らむのは、彼もまた東京五輪世代であるからだ。
この日は日本代表の齊藤俊秀コーチが視察に来ていた。
今後、J1昇格争いの中で目に見える結果を出し、大きなインパクトを残せば東京五輪の選考ラインに入ってくる可能性は十分にある。
「東京五輪は興味あります。出せてもらえるなら出たいですし、お金を払って出られるなら出たいです。チャンスはゼロではないと思いますが、そんなに甘いもんじゃないというのも分かっています。あまりそのことを意識してしまうと力んでしまうんで(苦笑)、今はまず毎試合、自分らしいプレーしていくだけですね」
東京五輪世代の攻撃陣の競争は甘くはなく、熾烈だ。
上田綺世は危機感を抱いて法政大学から前倒しで鹿島に入団した。三好康児、安部裕葵ら東京五輪世代の多くの選手が海外移籍を選択し、18席という椅子を手に入れるために、どの選手もガムシャラだ。
「(上田は)俺からしたら本当の上の人なので……。サイドハーフは競争が激しいですし、活躍している選手がたくさんいるけど、自分はまずチームでやるべきことをしっかりやることですね。
ユースの時には、自分がプロになることすら考えていなかった。今、こういう状況になってもちろん欲が出てきていますが、ちょっとずつ上にあがって行ければいいかなと思っています」
プレーの持ち味はスピードとドリブルだが、意識は1歩ずつと慎重だ。
コーチの目に、どう映ったか。
松井は、自分の若い頃のような若きドリブラーに優しい視線を向ける。
「松尾のドリブルは魅力。これから伸び代しかない。今後が楽しみですよ」
フランスで「ルマンの太陽」とファンに愛された選手の目利きである。
松尾もその言葉を受け止めている。
「伸び代は、自分の特徴だと思っています(笑)」
この日、ピッチを見つめてメモを取っていた齊藤コーチの目に若きドリブラーはどう映ったのだろうか。横浜FCには東京五輪世代の斉藤光毅もいるが、持ち味が違う松尾の名前もしっかりとインプットされているはずだ。大学サッカーとは異なるJリーグの強度にも慣れ、守備の意識もより高まった。
松尾は一度、五輪代表チームに招集し、試してみる価値のある選手だと思う。