eスポーツは黒船となるかBACK NUMBER
日本のeスポーツで最も重要な大会。
LJLでは、賞金は話題にならない。
text by
八木葱Negi Yagi
photograph by2019 Riot Games, Inc. All Rights Reserved
posted2019/09/21 11:30
3000人級の観客を収容するのはどんな競技の大会でも難しい。「LJL」決勝戦の盛り上がりはそういう意味でも価値がある。
格闘ゲームで起きた悲しい出来事。
eスポーツの賞金については、同時期にもう1つ印象的な出来事があった。
奇しくもLJL決勝と同じ週末に東京ゲームショウ内で開催された『ストリートファイターV』の大会で、日本eスポーツ連合が発行するプロゲーマーライセンスの受け取りを辞退している選手が優勝したことで、500万円が支払われるはずだった賞金が10万円相当に減額されたのだ。
日本ではLoL以上に一般的な認知度を持つ『ストリートファイター』の大会であり、内容的にも、現時点で世界の4強と目されるプレイヤーが次々と敗れる中で、トップレベルで長く活躍する日本人同士の決勝戦となるアツい展開だった。にもかかわらず、話題は賞金一色になってしまっていた。
『ストリートファイター』のプロシーンはテニスやゴルフのようなツアー形式で、選手たちは世界を転戦しながら賞金とポイントを積み重ねていく。普段であれば、賞金額よりも試合内容や選手のプレーがファン同士の会話のタネになる、歴史ある世界だ。そして今回は、日本国内でツアーポイントが認められている唯一の大会だった。
その大舞台での試合内容や選手のドラマが霞んでしまったことは、やはり残念としか言いようがない。
賞金額はファンにとっての意味は?
そもそも大会の賞金がいくらかというのは、自分たちの懐に入るわけではないのだから、ファンにとって実質的に意味のある数字ではない。それを巡って選手たちが真剣勝負をしていると信じられればOKで、逆に言えば選手たちが真剣勝負をしていることが共有されてさえいれば、観戦の価値に賞金の額は影響しない。
たとえば先日始まったラグビーワールドカップの優勝賞金は0円である。だからと言って、「じゃあワールドカップの優勝に価値はないんだな」と思う人はいないだろう。人が大会に感じる価値は、本質的に賞金の額とは関係ない。それなのに、大会終了後に賞金の多寡やその問題ばかりが報道されるのはあまりに切ない。