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ACL4強を決めた阿部勇樹の誇り。
「ここは埼玉スタジアムだから」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2019/09/18 17:00
浦和レッズと阿部勇樹はACL4強に駒を進めた。3度目のアジアの頂点は、クラブの誇りを示すものになる。
残留争いに巻き込まれたリーグ戦も。
しかし浦和の現状は厳しい。
快調なACLとは裏腹に、リーグ戦では15位にまで順位を下げている。5チームが同勝ち点で並ぶ混戦とはいえ、入れ替え戦となる16位のサガン鳥栖までは勝ち点4差でしかない。ACLでの快進撃をきっかけに、リーグ戦でも巻き返したいところだろう。しかし、阿部は冷静に繰り返した。
「きっかけになればいいというよりも、きっかけにしなくちゃいけないし、繋げなくちゃいけない。スタジアムに足を運んでくれた人を笑顔で帰らせることが、なかなかできていない。結果が出ないとお互いがしかめ面になっちゃうからね。今日は本当によかった。でも、今日はもう終わりだから」
ロッカールームから最後に姿を見せた阿部は、珍しく10分近く語り続けた。記者の質問に答えるというよりも、自分に言い聞かせるような言葉には彼の想いがあふれていた。
埼玉スタジアムが完成して以来、浦和レッズはビッグクラブとしての道を歩んできた。しかし、このスタジアムが見てきたのは歓喜ばかりではない。落胆や苦悩、怒り、涙といったネガティブな空気に覆われる機会のほうが多かったかもしれない。
けれど、ここはまさに浦和レッズの家だ。どんなときでも帰る場所、チームにとっても、選手にとっても、そしてサポーターにとっても。だからこそ、責任がある。
聖地・埼玉スタジアムに恥じない戦いとはなにか?
阿部の言葉が今あらためてそれを問いかけてくれた。