甲子園の風BACK NUMBER
投手起用に疑問が残ったU-18W杯。
「世界一」より優先すべきこと。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byAFLO
posted2019/09/12 07:00
甲子園閉幕から約1週間で始まるU-18ワールドカップは、常に困難だ。勝利至上主義で臨む大会かどうかは検討の余地がある。
世界一のために選手が疲弊しては……。
三塁手の石川昂弥(東邦)は最終戦のあと、こう語った。
「チームとしてミスが多く出ていたので、そのミスをなくそうと意識しすぎて、みんな硬くなって、足が動かなくなったりして、またエラーが多くなった。日本代表ということ、日の丸を背負っているということを考えすぎて、いつもの自分たちのプレーが、僕だけじゃなく、チーム全体としてできていなかったなと感じました」
今大会中、選手たちの口から「14万人の高校球児の代表として」という言葉が何度も聞かれた。
もちろん世界一を目指すことや、日の丸を背負うプレッシャーを感じながら戦うことはかけがえのない経験になる。そのプレッシャーを背負った上で、力を発揮し、勝つことができれば一番いいのかもしれない。
しかし彼らはまだ育成年代。高校野球の日常とはまったく違う環境の中、今の自分の力を思い切り世界にぶつけて、この先の人生に活きる財産を得ることに意味がある。その上に、世界一がついてくるのではないか。
チームが世界一に固執するあまり、選手たちの体や心が疲弊する大会にはなって欲しくない。
決勝戦で、目を輝かせながらアグレッシブに走り回り、好プレーを連発する台湾やアメリカの選手たちを見て、改めてそう感じた。