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「甲子園とは違う緊張」も18三振。
奥川恭伸は賞賛にも気を抜かない。
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byKyodo News
posted2019/09/06 11:50
スーパーラウンドのカナダ戦。目標としていた7回を投げきり、ベンチへ戻る奥川恭伸。1失点18奪三振の快投にも、反省の言葉を口にした。
甲子園で叶わなかった頂点を。
それでも当の奥川は反省の言葉を多く並べた。前述したように決め球の1つとなったスライダーのキレ、本塁打を浴びたこと、そして7回を投げ切ったことについても「残りの2イニングがしんどかったので課題が残ります」と厳しい表情で振り返り続けた。
そのすべての根源には「世界一になって、みんなと喜びを分かちあいたい」という思いがあるからだろう。U-18ベースボールW杯を「甲子園とは違った緊張」と奥川は表現した。それは日の丸を背負う重みだけでなく、自らが登板できない中でスーパーラウンドに駒を進めてくれた味方への感謝もある。だからこそ、ベンチにいても笑顔を絶やさず、仲間を鼓舞してきた。
次の登板は、理想通りに勝ち進むことができれば、さらなる強敵が待ち受けている決勝戦だろう。そこでさらに進化を遂げた投球が披露された時、日本史上初の大会制覇が大きく近づくに違いない。
そして、甲子園であと一歩届かなかった頂点に立ったとき、奥川の本当の笑顔が見えるはずだ。