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「甲子園とは違う緊張」も18三振。
奥川恭伸は賞賛にも気を抜かない。
posted2019/09/06 11:50
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by
Kyodo News
圧巻としか言いようのない投球だった。
夏の甲子園決勝を投げ抜いた8月22日から、ちょうど2週間が経過したU-18ベースボールワールドカップのスーパーラウンド初戦(9月5日)。疲労を考慮して実戦登板を回避してきた星稜高の奥川恭伸が先発として復帰、前回大会4位のカナダを相手に7回18三振を奪った。
文字通りの快投。だが奥川は、賞賛する報道陣の問い掛けに対し、ことごとく課題を挙げ、「これで満足してはいられない」と総括した。
試合前の心境を「(カナダ戦の登板は)しばらく間隔が空いていたし、国際試合の難しさもあると思っていたので不安はありました」と振り返る。それでも先頭打者をストレートのみで押し切り、最後は151キロの球で空振り三振に抑えた。
すると、そこから奪三振ショーが始まる。
本塁打を浴びるも、気持ちは切れず。
「どこまで押していけるか試したかったので」とストレートを軸にした配球に、随所にスライダーを織り交ぜていくと、3回までに8奪三振。
4回、相手の4番打者に対し、「選ぶ球種も間違えたし、コースも中途半端だった」と、高めに甘く入ったストレートを本塁打にされて先制を許したが、気持ちを切らすことなく、続く打者をスライダーで空振り三振に抑えてみせた。
DeNA・河原隆一スカウトは、このスライダーを「曲がりが大きく、ブレーキもかかっていましたね」と評価。投じるコースも「特に左打者に対して膝もとに投げ込んでいた。外からバットが出てくるカナダの打者に対して、バットに当たらないコースだったので非常に有効でしたね」と、バッテリーを組む同じ星稜の捕手・山瀬慎之助との配球を称えた。
ただ、奥川曰くこのスライダーについては本来の出来からは程遠かったようで、「腕を緩めることで修正をしました」と振り返る。「めいっぱい腕を振って投げられるようにしないといけません」と、さらなるキレ味を自らに求めていた。