フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
選手「再生」の名コーチが語る、
本田真凜と羽生結弦の未来。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAkiko Tamura
posted2019/09/08 20:00
世界選手権2連覇中のネイサン・チェンなど、数々の名選手を指導してきたアルトゥニアンコーチ。
シニア女子に4回転の時代は来るか?
──シニアの女子にも本格的な4回転の時代は来るでしょうか?
「今シーズン4回転を跳ぶ女の子たちがシニアに上がってきますが、どのくらいジャンプを保っていけるのか興味深く見守っています。今のところ4回転を跳んだのは、ほとんどがジュニアの選手だった。少女体型ではない女子選手も4回転を跳ぶようになる時代が来るのかは、まだわかりません。私は個人的に、ジュニアからシニアに上がる年齢を上げるべきだと思います。まだ成長期は、骨も柔らかいので怪我をしやすい。14歳、15歳の女の子たちに無理なジャンプをやらせて、将来人工股関節になってはいけないと思う。少女たちと、大人の体型になった女子が同じ土俵で戦うというのは無理があります」
「私たちの間に多くの言葉はいらない」
──本田真凜選手の話に戻りますが、今の彼女の課題は何でしょう
「もう少し、自主性を持ってトレーニングをしていくこと。ジャンプなどの調子が良いと追い込みすぎて疲労し、回復するのに2,3日かかってしまう。そこまで無理しなくても良いので、毎日安定したトレーニングの習慣をつける必要があります。コーチの仕事とは、子供を育てるのと同じ。生徒がいつまでもコーチに頼らなくても良いように、自立させることが目標だと思っています。最初の1,2年は手取り足取りでも良い。でも3年、4年たっていったら自分のトレーニングに責任を持って、やるべきことを理解させるのが私の仕事です」
──ネイサン(・チェン)がイェール大学に入学して自主トレをしながらも、昨シーズン良い結果を出したのは、まさにそういうことですね。
「その通り。彼のことは8年間トレーニングしてきましたが、もう私があれこれ言わなくても彼は自分に必要なことがわかっている。彼はとても知的で意思の強い、しっかりした若者です。夏休みの間は一緒にトレーニングして、2日ほど前に東海岸に戻りましたが、私たちの間に多くの言葉はいらない。一言、二言で彼はすぐに理解するんですよ」