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丸山城志郎が貫いた自分の柔道。
66kg級は「阿部一強」ではない。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byNaoki Nishimura/AFLO SPORT

posted2019/08/27 11:50

丸山城志郎が貫いた自分の柔道。66kg級は「阿部一強」ではない。<Number Web> photograph by Naoki Nishimura/AFLO SPORT

井上監督が「世界最高峰」と評した男子66kg級。決勝戦で韓国代表のキム・インファンを破って優勝を決めた瞬間の丸山城志郎。

足を引きずる丸山に「ここまでか」。

 序盤、阿部の投げ技を辛うじてしのいだあと、丸山の様子がおかしくなった。右足をひきずって歩きだしたのだ。

 異変は明らかだった。容易ならざる負傷であることが見て取れた。しかも相手は阿部だ。勝負の帰趨は決まった。そう感じた人は少なくなかったに違いない。

「あ~」「ここまでか」

 そんな嘆声が周囲から聞こえてきた。

 だが現実は異なった。

 技が出なくなり、丸山は試合時間の半分である2分までに指導2つを受ける。あと1つとられれば反則負け。ぎりぎりまで追い込まれたところから、意を決したように攻勢を強める。前へ出続ける丸山の一方で、阿部の積極性が影を潜める。

 怪我をものともしない丸山の気迫のすさまじさはもちろん、そこにあった。

痛みに耐えて奪った技あり。

 ただ、気持ちの問題だけではなかった。丸山が時折放つ内股などはやはり、切れがあった。丸山が磨いてきた技があってこそ、阿部も慎重にならざるを得なかった。

 決着がついたのは延長に入って3分46秒、試合時間計7分46秒。

 丸山は巴投げから浮き腰を仕掛ける。こらえきれず、阿部の体が回る。技あり。丸山は、右手の拳を握り締めた。

 負傷は「おそらく右膝内側(靱帯損傷)」(丸山)。決勝戦は棄権してもおかしくはない重傷だったが、「尋ねたところ、『出ます』と言いました」(井上監督)。

 痛み止めを飲み、患部に注射をうち、テーピングで固めて臨んだ決勝。万全ではなくとも、阿部を破った丸山に敵はいなかった。試合開始早々から何度も一本を奪えそうな切れのある技を仕掛け、内股と腰車で技ありを2つ奪い、合わせ技一本。完勝だった。

【次ページ】 “遅咲き”の転機は膝の怪我。

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