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ホンダがF1復帰後初のPP獲得!
コース外での「5分52秒」の戦い。
posted2019/08/12 11:30
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンがハンガリーGPの予選でポールポジション(PP)を獲得した。フェルスタッペンにとっては初めてのPP。ホンダにとっては2006年第3戦オーストラリアGP(ジェンソン・バトン)以来、142戦ぶりのPPだった。
ただし、'06年のF1はレース中に給油が可能だった時代で、PPを決めるQ3は決勝レースのスタート時に搭載する燃料を給油してアタックしていた。
そのため、この頃の予選は単純に速さを競うというよりは、レースを見据えてライバルより少しでも多くの燃料を搭載しつつ、少しでも速いタイムを争うという戦いに主眼が置かれ、PPの価値は以前よりも低くなっていた。それ以前の予選も、1アタック方式を導入するなど、最速のドライバーとマシンを決める場というよりは、エンターテイメント性を重視した方式が採用されていた。
現在のようにアタック回数と燃料搭載量が自由に設定される中で行われた予選でホンダがPPを獲得したのは、'92年カナダGPでのアイルトン・セナが最後だった。つまり、今回のハンガリーGPのPPは、ホンダが27年ぶりにコース上で最も速いラップを刻んだ瞬間だった。
ホンダが挑んだ真っ向勝負。
今回のPP獲得は、雨に助けられたわけでもなく、ホンダがメルセデスと真っ向勝負して手にしたという点でも評価できる。
ホンダとメルセデスの戦いは、Q2から始まっていた。
Q2をルイス・ハミルトン(メルセデス)に次ぐ2番手でQ3進出を決めたフェルスタッペン。その差はわずか1000分の25秒。逆転できる手応えをつかんでいた。
Q3、1回目のアタック。フェルスタッペンがいきなり魅せた。ただひとり1分15秒台の壁を破り、1分14秒958をマーク。メルセデス勢2台を上回って暫定PPの座を手にした。ホンダが予選で暫定PPに就くのは、'15年に復帰して以降初めてだった。
しかし、ホンダ陣営はまだ安心していなかった。メルセデス勢もそしてフェルスタッペンも、もう1セット新品のソフトタイヤを保持しており、もう1回アタックできるチャンスが残っていたからだ。しかも、ハンガリーGPの舞台であるハンガロリンクは普段あまりレースが行われないため、走り始めは路面が汚れているが、アタックする毎に路面にラバーが乗り、ラップタイムが速くなる。