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ホンダがF1復帰後初のPP獲得!
コース外での「5分52秒」の戦い。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2019/08/12 11:30
自身初のポールポジションを奪ったフェルスタッペン。決勝はわずかな戦略の差で逆転されて2位となったが、表情は晴れやかだった。
ドライバーが持つセンサー。
その間、5分52秒。それを可能にしたのは、フェルスタッペンからの無線だったと田辺TDは感謝する。
「走行データはひとつではなく、何十、何百ものデータがテレメトリーで送られてきます。何かあれば、すぐに対応できるよう、データにアラームをかけるなどして、エンジニアたちも目を光らせていますが、膨大な量のデータがあるので、どうしても解析には時間がかかります。
そういう中で、最も優れたセンサーを持っているドライバーが『ここがおかしい』と言ってくれれば、エンジニアはほかのデータを見ることなく、問題だと思われる場所をすぐに調べることができます」
フェルスタッペンの猛烈な追い込み。
最後のアタックは、ハミルトンではなく、そのチームメートのバルテリ・ボッタスとの一騎打ちとなった。しかも、セクター2まではボッタスのほうが0.061秒速かった。だれもがフェルスタッペンのPPをあきらめかけていたが、フェルスタッペンとホンダのスタッフは信じていた。
フェルスタッペンのコンピュータ制御の中には、新しいエネルギーマネジメントが入っており、それはセクター3区間を修正していたものだったからだ。
最終コーナーを立ち上がってきたフェルスタッペンは、もう不満をこぼすことはなかった。コントロールラインを通過したタイムは、1分14秒572。ボッタスを1000分の18秒上回り、見事PPを獲得した。
レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、その走りを「最後の2つのコーナーだけで、マックスはバルテリを逆転した」と称賛した。フェルスタッペンのセクター3の区間タイム21.021秒は20人のドライバー中最速で、セクター3だけでボッタスを0.079秒上回る猛烈な追い込みを見せていた。
その走りを可能にしたのは、ホンダを信じて問題を告げたフェルスタッペンの勇気と、そのフェルスタッペンを信じて、日本とイギリスのファクトリーにいたホンダのエンジニアたちが最適なエネルギーマネジメントを弾き出すまでの「5分52秒間」の戦いだったのである。