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安美錦「ケガを敵と思わないで」
40歳まで戦い抜けた勇気と寛容さ。
posted2019/08/13 08:00
text by
荒井太郎Taro Arai
photograph by
Kyodo News
関取最年長だった40歳のレジェンド、安美錦がついに土俵を去った。
関取在位117場所は魁皇と並び歴代1位タイ。対戦したすべての横綱から白星を挙げ、朝青龍からは4つの金星を奪うなど、上位キラーとしても名を馳せた。
先の名古屋場所2日目、関取最年少21歳の龍虎に寄り倒された際、古傷を抱える右膝を負傷して翌日から休場。再出場を目指して休場中も稽古場に降りていたが、再び土俵に立つことは叶わず、幕下への陥落が確定的となったところで潔く引退を決意した。
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22年半という長きにわたった現役生活の大半は、相手と対峙する以前にケガと向き合ってきた。それでも「ケガとの戦い」という周囲の見方とは、本人の中では捉え方を異にする。
「戦いというより、ケガと一緒にここまでやってこれた。ここまで相撲と向き合わせてくれたのはケガのおかげ。ケガに感謝しています」とまで言い切った。
25歳の時に訪れた最初の試練。
最初の試練は前頭9枚目だった平成16年名古屋場所で襲ってきた。この場所の11日目、闘牙に押し倒されて右膝の半月板と前十字靭帯を損傷し、翌日から休場。のちに前十字靭帯は断裂していたことが判明し、医師からは手術を勧められたが、患部にメスを入れれば復帰までに最低でも半年はかかってしまい、番付も三段目まで落ちることになる。
25歳という年齢もあり、悩み抜いた末にケガとうまく付き合うという道を選択した。
「(幕内に)残りたいというのもあったし、そこそこ気をつけながらやれば取れそうだったんで」と翌場所初日には土俵に立ち、以後、1日も休むことなく2年後の平成18年九州場所には新小結に昇進した。
左の浅い上手を取って頭をつける体勢から、機を見た出し投げで相手を崩しながら攻めるという小兵の業師ならではの取り口には定評があったが、ケガを契機に立ち合いで強く当たって相手に圧力をかけるという押し相撲に変貌しつつあったのもこのころだった。