“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
守護神になれなかった男のJデビュー。
FC琉球のGK猪瀬康介、不屈の魂。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/07/30 19:55
流経大柏へ進学後、守護神としてのポジションまであと一歩と迫ったが、怪我などで果たせず。プロで心機一転、絶対守護神を目指す!
猪瀬は「今後、大化けする可能性も」。
「年齢関係なしにGKがどっしりしているのが一番チームとして大きい。周りに安心感を与えられるGKである事が重要なんです。そういう意味では康介は凄く落ち着いてできている。
正直、彼に調子に乗られたら困るから釘を刺そうと思って、自己評価を聞いたんです。そうしたら『ちゃんと分かっているな』、『考えているな』と思ったので、多くのことを言わなくて済んだ。まだまだな部分は多々ありますが、彼のパーソナリティーは18歳らしからぬところがある。地に足がついていて、ふわふわしていないんですよ。今後、大化けする可能性もなきにしもあらずですね」(樋口監督)
どんな状況に置かれても自分の成長を求め、自分が今何をすべきか、どう心構えを持っておくべきか冷静に考えて行動する。これはJリーグに入団したばかりの高卒ルーキーが簡単にできることではない。彼の中で、高校3年間で1度もレギュラーが掴めない、かつ1年生の控えという辛い状況でも腐ることなく黙々と練習をこなし、努力を重ねてきた経験は、大きな糧になっていることは間違いない。
「周りからは『高校で1年生にレギュラーを奪われたGK』とか、『セカンドGKでプロに行った人』と言われることが多くて、それが本当に悔しいんです。でもそれは事実だし、だからこそプロで成功したいと強く思っているんです。
それに一度プロに入れば、年代別日本代表だろうが、大卒だろうが、レギュラーだろうが、スタートラインは全部一緒。セカンドGKがプロに行ってもどうせ埋もれて、プロ生活終わるだろうと思っている人が大半だと思う中、僕は『だから何?』と思いたい。プロになってからは過去の成績は一切関係ない。今をどう過ごすか、将来をどう作っていくかが大事だと思っています」
サッカーを断念しかけ、就職活動もした。
一度はサッカーを辞めようと思い、就職活動もしたという猪瀬。だが、サッカーへの情熱が捨てきれずに懸命に取り組んだ結果、まずはプロサッカー選手としての人生の第一歩を進めることができた。だからこそ、プロとして1試合プレーした程度で浮かれてしまうような覚悟では、当然ない。
「水戸戦から練習でより一層ビルドアップに参加する意識も持ちましたし、昔よりも怖がらず、前に出てプレーできるようになりました。セットプレーもハイボールも出られるか出られないかギリギリのところでもまずは出てチャレンジしてみる。練習ではいくらミスしてもいいので、ギリギリだと思った時はとにかく出てみて、その感覚を掴むのが大事だと思っています。
もうボールを見て、あの時出ていれば良かったと思いたくないし、実際、積極的に出てみてからの発見も多いので。でも、まだまだ足りない部分が多くて。出ても触るだけじゃダメ、出るならしっかりと弾く。弾く場所を選んで、できればキャッチを選択できるようにしたい」