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“喋る山口茜”に感じた成長と魅力。
リオ五輪から3年、奥原希望を追って。
posted2019/07/30 11:40
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph by
Kyodo News
今大会には、“喋る山口茜”がいました。
「6年ぶりと聞くと若くないみたいだけど、まだ22歳ですよ(笑)」
7月28日の決勝で奥原希望に勝利し、バドミントンのジャパンオープンを6年ぶりに制した山口茜が報道陣を笑わせている姿を見て、3年前の夏を思い出しました。
2016年の夏、リオデジャネイロの地で山口茜は報道陣の前で泣いていました。
もともと、言葉数は少ないタイプ。しかし、中学時代から彼女を取材してきて、涙する姿を見るのは初めてでした。
「これが……今の実力だと思います。いろんな思いを背負ってやってきた。その方たちの思いを叶えられなかった」
そう声を絞り出すように、19歳はインタビューに答えました。
リオ五輪、準々決勝の日本人対決。
特に印象に残ったのは、山口が繰り返しこぼした「次につながる試合だった、次に活かして絶対に強くなる」という言葉でした。
このときの相手は、今回のジャパンオープン決勝と同じく日本のエース、奥原希望。リオ五輪女子シングルス準々決勝は、無情にも日本人対決でした。同国対決のため、コートサイドから指示を送る日本人コーチが立つことはなく、静寂の中で行われた一戦でした。
粘って繋ぐ奥原と攻撃的な山口。ともに相手の手の内を知り尽くしたライバル対決はゲームカウント1対2、奥原の逆転勝利でした。
第1ゲームは山口が速い展開と得意の打ち出しの速さで相手のリズムを崩し、あっという間に勝ち取りました。しかし、第2ゲーム、ファイナルゲームは粘って繋ぐ奥原のペースに持ち込まれ、山口はメダルの夢に届きませんでした。