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“喋る山口茜”に感じた成長と魅力。
リオ五輪から3年、奥原希望を追って。 

text by

田中大貴

田中大貴Daiki Tanaka

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photograph byKyodo News

posted2019/07/30 11:40

“喋る山口茜”に感じた成長と魅力。リオ五輪から3年、奥原希望を追って。<Number Web> photograph by Kyodo News

東京五輪の会場でもある武蔵野の森総合スポーツプラザで行われたジャパンオープン。奥原希望(右)との決勝戦を制し、山口茜が頂点に立った。

速いテンポで主導権を握った山口。

 あれから3年。ジャパンオープン決勝を控えて「奥原さんの粘りに飲まれないこと。長いゲームには絶対にしない」と語っていた山口。あえて、勝利のポイントを報道陣に発信しているようにも感じました。

 そして、まさにそのプラン通り、山口は速いテンポで奥原のリズムを崩し続けました。

「長いラリーには持ち込まない」

「リオと同じ展開にはしない」

 決勝でのプレーを観ていると、そんな山口の心の声が聞こえてくるようでした。ほかの選手よりも早いタイミングでシャトルをとらえる、独特のラケットさばきは精度を増していました。心配されていたスタミナも十分で、最後までスピードと運動量が落ちることはありませんでした。

東京五輪でも「楽しむ」ことはできるか。

 そして、決勝では彼女が最も大事にする言葉、「楽しむ」を実践しているように見えました。

「バドミントンを楽しめたか。今日のゲームを楽しめたか」

 試合後、常にこの言葉を自分に問うてきた山口。苦しい展開になった時、コート内で自らを追い込み、下を向く山口の姿はそこにはありませんでした。

 これで直接対決は山口8勝、奥原11勝。リオ五輪での敗戦後に限れば、山口の8勝5敗です。先に五輪でメダルを手にしたのも、世界選手権の頂点に立ったのも奥原希望でしたが、その背中を追い続けて来た山口が、東京五輪でどんな姿を見せてくれるのか。

 もし、山口と奥原が東京五輪決勝の舞台で戦うという大一番がやってきた時、勝っても負けても「楽しめた」と言ってくれるのではないか……ジャパンオープンでは、山口のそんな心の成長を感じました。

 来年の東京五輪で優勝したら「まだ23歳。私、若いんです」と、報道陣を笑わせて欲しい……今大会の“喋る山口茜”は、これまで以上に魅力的に感じられました。

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