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自分自身の限界を知るために──。
男子バレー福澤が自らに課す使命。 

text by

米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byItaru Chiba

posted2019/07/13 17:00

自分自身の限界を知るために──。男子バレー福澤が自らに課す使命。<Number Web> photograph by Itaru Chiba

33歳になった現在も自らの課題を冷静に分析し、日々進化する努力を怠らない。

点を取れば使われる、という真実。

 転機は2015/16シーズンのブラジルリーグ、マリンガへのレンタル移籍だった。そこでの考え方の転換が、福澤のプレーを変えた。

 福澤は、2008年から2013年まで日本代表の不動のメンバーだったが、2014年に左前距腓靭帯損傷で離脱し、2015年は登録メンバーから外れた。石川祐希(キオエネ・パドヴァ)や柳田将洋(ユナイテッド・バレーズ)が目覚ましい活躍で世代交代を印象づけた2015年のワールドカップが行われていた頃、福澤は地球の裏側でもがいていた。

 マリンガでスタメンを外れ、再びポジションを取り戻そうとあえぐ中でたどり着いたのが、泥臭く結果に執着する姿勢だった。帰国後、福澤はこう語っていた。

「考え方が逆転しました。以前は、こういう打ち方をしたい、こういう決め方をしたいと、形にこだわりすぎていた。きれいにプレーしようとしすぎていました。でも、きれいに(ブロックを)抜いて打った1本も、無理やり押し込んだ泥臭い1本も、1点は1点。

 まず何がなんでも得点につなげるぞ、というものがあった上で、じゃあそのためにどうするかという考え方になった。監督も、こいつがこういうスパイクを打ったから使おう、とはならないけど、どんな形であれ、こいつが出て点が入った、こいつが出て勝った、となれば使ってもらえるんです」

覚悟を持って、腹を決めて。

 どんなトスが来ようと、それを何とかして得点や味方のチャンスにつなげることが、自分の先にもつながる。その環境が、福澤の進化を促した。

「ギリギリに追い込まれた中で、それをやらないと生き残れない、という意識が、結果的にプレーの幅につながっていったのかもしれません。それをやらないと自分はここで終わるんだ、という一種の覚悟を持って、腹を決めて、コートに入っているので」と言う。

 今年のネーションズリーグでは、得点を決めた後に、チームメイトと胸をぶつけ合って激しく喜びを表すシーンが度々見られた。そんなコート上での感情表現も、ブラジルリーグを経て、自然と出るようになったもの。ブラジルで感じた危機感と、その時、腹に据えた覚悟を、福澤は今も持ち続けているからだ。

【次ページ】 「今が大事」という考え方。

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