バレーボールPRESSBACK NUMBER
自分自身の限界を知るために──。
男子バレー福澤が自らに課す使命。
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byItaru Chiba
posted2019/07/13 17:00
33歳になった現在も自らの課題を冷静に分析し、日々進化する努力を怠らない。
「今が大事」という考え方。
「自分の成績次第で次のシーズンの所属先がないかもしれないとか、その1試合の結果によって次から試合に出られなくなるというプロの厳しい世界に身を置いた時、『今まで自分はどれだけぬるま湯につかってたんだろう』と思いました。
そこに行くまでも、自分の中では常に100%でやっている認識だったけど、いざそこに放り込まれた時に、もっとやらないと生き残れない、逆にまだこれだけやれる余白があったんやなと、当時すごく感じました。やっぱりそこまでやらないと、結果はついてこない。それ以来、先のことよりも何よりも、今が大事だという考え方に変わりました。
同じチームで長くやり続ける日本の企業スポーツの中で、自分は無意識のうちに、『今年うまくいかなくても来年頑張ろう』というふうに、先を見てプランを練っていたところがどこかにあった。でも海外に出たら、トップでやっている選手にそんな人は誰一人いない。それが世界との差なんだなと感じました。海外では自然と追い込まれる状況があって、当たり前のようにストイックで、だからストレスにも耐性があるんじゃないかなと」
この1本で自分の人生が決まるかも。
それ以来、福澤は自分で自分にプレッシャーをかけ、自分を追い込み続けている。
「自分の頭の中に常にあるのは、『この1本で自分の人生が決まるかもしれない』、『この1戦で結果が出なければもう自分のバレー人生は終わるかもしれない』ということ。そういうプレッシャーをずっと自分にかけているので、自分の中にある不安を、声を出したり、激しい感情表現をすることによって、吹き飛ばそうとしているところはあります。それをやらないと押しつぶされてしまって、もうコートの上で戦えなくなるから」
東京五輪が1年後に迫った今、五輪経験者でまだ現役を続けているのは、福澤と清水邦広(パナソニック)、松本慶彦(堺ブレイザーズ)だけだ。ただ、だからと言って、福澤は五輪の経験を他の選手に伝えることが使命だとは捉えていない。