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清原和博の返信、大切な戦友たちへ。
忘れない13本のホームランとバット。
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byHirofumi Kamaya
posted2019/07/12 10:00
高校時代に甲子園で放った13本のホームラン。今でもそのすべてを鮮明に覚えているという。
甲子園のことだけは記憶から消えない。
こうして、何気ないことまで思い返してみても、なぜ僕のホームランが皆さんに大切に思ってもらえるのか、理由はやはりわかりません。
ただ、僕は今いろいろなことを忘れてしまっていて、それが覚醒剤の後遺症なのか、抗鬱剤のせいなのかもわからず、日々、憂鬱で頭がボーッとするような感覚に襲われることばかりなのですが、そんな中でも甲子園でのことだけは不思議と記憶から消えないんです。
あなたたちが投げたボールの残像から、打球の行方まで、はっきりと思い出すことができるんです。それが何より僕の救いであり、だからあの日、涙が止まらなかったのだと思います。
時間がかかってしまいましたが、大切な戦友たちへ、30年越しの感謝を込めて。
2019年初夏 清原和博
文春文庫
PL学園時代の清原和博が甲子園で放った通算13本塁打は、今後破られることがないであろう不滅の記録だろう。この13本は、ただの記録として残っているわけではない。甲子園の怪物に出会い、打たれた球児たちは、あの瞬間の”記憶”とともに、その後の歳月を歩んできた――。
<本体600円+税/鈴木忠平・著>
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