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牝馬特有の脚ではなく「力ずく」。
歴史を塗り替えたリスグラシュー。

posted2019/06/28 07:30

 
牝馬特有の脚ではなく「力ずく」。歴史を塗り替えたリスグラシュー。<Number Web> photograph by Satoshi Hiramatsu

リスグラシューの父・ハーツクライはドバイレース(GI)を制すなど、海外でも実績を残した名馬だ。

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平松さとし

平松さとしSatoshi Hiramatsu

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Satoshi Hiramatsu

 6月23日に行われた宝塚記念(GI)を制したのはリスグラシュー(牝5歳、栗東・矢作芳人厩舎)だった。

 キャロットファームの勝負服にピンク色の帽子。2016年に同レースを優勝したマリアライトと全く同じなのだが、牝馬という点も共通している。

 春のグランプリとして知られるこのレース。牝馬の優勝例はここ10年で2頭、すなわちマリアライトとリスグラシューだけだが、'05年には、スイープトウショウが11番人気というダークホースにもかかわらず牡馬勢を一蹴した例がある。

 当時の1番人気馬は、'03年のジャパンCの覇者で、前年の宝塚記念に続く連覇を狙ったタップダンスシチー。2番人気は、前年の秋に天皇賞、ジャパンC、有馬記念のビッグレースをコンプリートしていたゼンノロブロイ。彼等をまとめてかわした末脚は、いかにも牝馬特有の切れ味を感じさせたものだった。

 また、先述したマリアライトも、8番人気という低評価を覆しての優勝劇だった。この時の1番人気馬はドゥラメンテで、2番人気がキタサンブラック。

 前者は前年、皐月賞と日本ダービーの2冠を制覇。直前には海を越え、ドバイシーマクラシック(GI、ドバイ)で当時ヨーロッパの最強馬とも言われていたポストポンドの2着に好走。後者はこの前に春の天皇賞、この後にはジャパンCを優勝し、この年、そして翌年も年度代表馬に選出された馬。これらの名馬を退けた伸びは、やはり牝馬らしい切れを感じさせる脚だった。

キセキ、レイデオロに次ぐ3番手。

 ひるがえって今回のリスグラシューはどうか。マリアライトと共通していたのは、馬主と枠、それに性別だけではなかった。前年にエリザベス女王杯を制してGI初制覇をした後、牡馬を相手に3戦し、勝てこそしなかったものの常に善戦を繰り返していたところまで同じだった。

 しかし、宝塚記念の勝ちっぷりに関しては、前述の牝馬2騎とは決定的に違った点がある。リスグラシューだけは、ダークホースではなかった。

 彼女は、3.6倍で1番人気に推されたキセキ、3.9倍で2番人気に支持されたレイデオロに続く3番人気だった。単勝5.4倍という、それなりの評価を受けていたのだ。

【次ページ】 手応えを掴んだ香港遠征。

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